コラム

2020/09/28

気候変動で変わる食文化

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食欲の秋。お芋に栗に果物に。日々、秋の味覚に襲われています(笑)。仕事柄座っていることが多いので非常に危険な状態です。

さて、私たちの暮らしに豊かさや楽しみをもたらしてくれる食ですが、気候変動をはじめとする環境悪化によってじわじわと影響を受け始めています。

今回その一つ、「青のり」を取材しました。
みなさん、青のりと一言で言ってもいろんな種類があるんですよ(というのは今回の取材で初めて知ったのですが)。

1971年から青のりを販売されてきた三島食品さんによると、青のりに適したのりは「すじ青のり」。色、香り共に優れており、青のりといえば「すじ青のり」だったそうです。しかし、近年、海水が高温であること、護岸工事により水中の栄養分が減っていることなどを理由に激減。ついには今年7月、原材料が確保できないことを理由にパッケージの色や商品名の変更を行いました。

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(左が変更前、右が変更後。三島食品ウェブサイトより)

今回、その背景についてideas for goodさんにて取材したのですが記事はこちら、企業としてのまっすぐな姿勢に深く共感をしつつ、環境の変化によってだんだんと食文化が失われていくことに寂しさを感じました。

取材に応じてくださった佐伯さんは
「気候変動による海水温の上昇、生態系の変化をみていると自然はもう元には戻せないのではないかと感じています。それによって食文化も変わりはじめています。現実を知り、ファッション的に取り上げるのではなく、ささいなことでも地道に取り組むことが大きな変化を起こすのではないかと思っています」と語っておられました。

青のりに限らず、私たち人間による環境破壊によって失われつつある食材はたくさんあります。
今年はサンマの値段が高いことが話題になっていますが、近い将来、サンマ=庶民の秋の味覚という方程式はなくなってしまうのかもしれません。それは単に何かが食べられなくなることを意味するだけではなく、食にまつわる風習や歴史、知恵、健康や雇用、地域らしさ、そんなもろもろを失っていくことをも意味します。

美味しいものが食べられる未来を選ぶのか、それともこれまでの伝統や風習といったつながりもなく、人工的につくられた食べ物に囲まれた未来を選ぶのか。私たちはそんな岐路に立っているのではないかと思うのは考えすぎでしょうか。


お好み焼きにぱらりとふった青のりから立ちのぼる香りとソースのマリアージュを楽しみながら飲むビールは最高です。美味しいものが食べられる未来を将来に残したいなあ。そんな思いを深くする秋です。