コラム
2023/04/03
高いと売れない?
話題の体験型ドーナツカフェ「koe dounts」に行ってきました。天井を覆う竹籠がつくりだす不思議な空間。写真で見たことがあるという方も多いかもしれません。
エシカルドーナツをうたうだけあって、素材には有機小麦や国産小麦、京都美山産の平飼い卵、揚げ油には米油とこだわりの素材が使われていました。値段は、ドーナツチェーン、Mドーナツより若干高め。コーヒーは550円なので倍近いでしょうか。なかなかいいお値段です。
にもかかわらず、レジには長蛇の列ができていました。休日ということもあったとは思いますが、次から次と人が並びます。客層を見ていると、若い方を中心に、観光客とおぼしき方もたくさん。フロアは常に満席でした。
「エシカルなものは高いことが多く、売れない。消費者になかなか買ってもらえない」。
なんとなく私たちはそう思い込んでいないでしょうか。電通の「エシカル消費 意識調査2022」でもエシカル消費を実践する一番の条件としてあげられたのは「価格が同じだったら」(44%)でした*。
でも本当にそうでしょうか?
今回の「koe dounuts」のように、価格が高くても、大人気のお店、商品、サービスはあります。その背景にはさまざまな工夫があるでしょう。今回の場合であれば、建築家・隈研吾氏が手がけたインスタ映えする内装かもしれません。もちろん美味しさもあるでしょう。
店舗では見えない、流通などの工夫もあるかもしれません。以前ある企業の方は、エシカルな商品を販売するためにIT技術を導入し、流通コストを下げて価格上昇分を吸収した、とおっしゃっていました。その結果、仕事の効率化もUPし、会社全体としてもメリットがあったそうです。
企業の方と話していると「(エシカルな商品なので)高くて消費者は買わないんですよ」というコメントを聞くことがしばしばあります。しかし、「koe dounts」をみていると必ずしも「高い=買わない」という構図ではないように思います。
コミュニケーションの視点からみると、「koe dounts」の場合、ドーナツの原材料から製造工程に至るまで、包み隠さずすべて「見える化」していることが印象的でした。たとえば、通常、店頭で販売されるパンやお惣菜などは原材料表示をされていないことがほとんどですが、表示されていることによって生まれる安心は高いように思います。
ファクトリー店舗を打ち出しているだけあって、小麦を石臼で挽いて、ドーナツを揚げ、デコレートする。製造工程を見える化することによる、面白さや安心感もありそうです。ちょうど目の前で、抹茶味のドーナツをつくっていたので素材について質問してみたのですがいろいろ答えてくれました。
娘はお兄さんが抹茶ドーナツづくりの工程を見せてくれたのがうれしかったようですっかりファンに。
店舗から商品に至るまでインスタ映えを意識したつくりも人気のカギでしょう。お店に入ってくるなり、スマホで写真を撮る人の多いこと。「撮られること」を意識して「撮りたくなる風景」をつくることも今のご時世ならではのポイントと言えそうです。
テーブルにドーナツを置いてロゴをバックに写真が撮れる。みなさん慣れた動作でサクサク写真を撮ってました。ちなみに店舗に使われている竹籠は京都嵐山の竹を使用した伝統的な六ツ目編みのかごで店内に572個もあるそうです!
フリップと一緒に撮ることも。
「koe dounts」に限らず、上手なコミュニケーションで、エシカルな商品を上手に販売しているブランドが増えてきました。「エシカル商品は高いから買ってもらえない」「意義が伝わらないから選ばれない」「だから積極的に販売していない」そんな時代はもう終わりではないでしょうか。
どうやったらエシカルな商品が選ばれるか、買ってもらえるか、ファンになってもらえるか。ヒントはたくさんありそうです。
*電通「エシカル消費 意識調査2022」(図5)