コラム
2024/04/21
「もう服はつくらないで」にどう応えるか
映画「燃えるドレスを紡いで」を観てきました。
パリ・オートクチュール・コレクションの公式ゲストデザイナー、中里唯馬(なかざと ゆいま)さんを通して「服の最終到達点」と「未来」が描かれるドキュメンタリー映画です。
中里さんが訪れたアフリカ、ケニア。そこには毎日毎日、私たちが手放した服が数十キロ単位の固まりで届けられていました。中古市場で販売されるものの、仕立て直しの段階で不要になった歯切れやそこでも不要になった服が地面に捨てられ、まるで服の床のようになっていました。川沿いも、捨てられた服で土肌が隠れ「服の土手」と言っても過言ではない状態。スクリーンに広がる映像に言葉を失いました。
産業廃棄由来なのか、個人が「リユース」という名のもとに手放したものなのか、経路まではわかりませんが、映画の中で中里さんが見る限り、どれも安いポリエステルや複合素材のものばかり。「次の人に着て欲しい」と思って大事に手放されたというよりは「もう着ないから捨てよう」と放り出された感が強いように感じました。
「世界でつくられる服の75%は廃棄されている」
日本でも着られなくなった服の約7割がごみになっています。残り3割は中古市場に流れたりリユースされたりしていますが*1、一部は輸出され、2015年には24万トン輸出されています*2。輸出先の国でさらに不要になったものがまるで掃き溜めのようにアフリカなど途上国を中心に輸出され、現地の産業を圧迫し、火災により有毒ガスが発生するなどの問題を引き起こしています*2。
「もう服はつくらないで欲しい」。
映画に登場する現地の方が語る言葉です。
この問いにどう応えるのか。リユースは大事ですが、リユースの限界も露呈している今、個人で、地域で、そしてファッション業界全体でこの問題について考え、それぞれにアクションを起こす時ではないでしょうか。
公式サイト「燃えるドレスを紡いで」
*1 https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/
*2 https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2022/05/29/21711.html