コラム
2022/05/07
いつもエシカルなものを選べない。その悩みに答えてみる。
先日、ある大学でエシカル消費についてお話をさせていただきました。その時のこと。
ある学生さんから
「中学校の頃からずっとエシカル消費に関心を持って、買い物の際はできる限りエシカルな選択をするようにしてきたが、お金がたくさんあるわけではないのでいつもエシカルなものを選ぶというわけにはいかない。この点についてどう考えたらいいか」
とコメントを求められました。わかるわかる。痛いほどわかる、その気持ち。
私もいつもオーガニックやフェアトレードといったエシカルな商品を選べているわけではありません。
「あー本当はこっちを選びたい......けれども財政的に厳しい......」と心苦しい思いをすることもしばしば。ではその限界の中で私がどう考えて、どんな選択をして、どう納得しているのか。気になって私なりに考えを整理してみました。
1.常にベターチョイスをめざす
そもそもエシカル消費には切り口がたくさんあります。オーガニックであったり、CO2の排出が少なかったり、包装材が少なかったり、生産者を大切にした製造だったり。ですので、たとえオーガニックの、値段の高い野菜が買えなくても、地場産のものを選んだり、フェアトレード認証を得ていなくても、寄付付きのチョコレートを選んだり、中古品を選んだりといった「ベターチョイス」をすることは十分可能です。
「パーフェクトは善の敵である(The Perfect is the Enermy for the Good)」とも言います。お金が十分にないからといって「もうだめだ!」と諦めることはありません。完璧でなくても「包装材の少ないものを選んだからよしとしよう!」「地元の農家さんから購入したからよしとしよう!」。少しでもよりよい社会づくりにつながる選択をしていれば「よしとする!」。これくらいの心構えで構いませんし、その方が長続きすると思います。
2.小さな金額でも大きな力
エシカルな商品をたとえ数百円でも購入すればそれは大きな力です。たとえばコンビニなどではもともと商品点数が少ないので数個売れるか売れないかでも品揃えの判断に影響するという話を聞いたこともあります。
こんな視点もあります。フェアトレード認証製品の日本人一人当たり年間購入額は104円*1。フェアトレードチョコレートを1枚(数百円程度)購入すれば軽く上回る金額です。もし多くの人が一年に1枚でもフェアトレードチョコを購入すれば......この数字は大きく変わるはず。「今年もフェアトレードチョコを1枚購入した(=日本人の平均購入額は超えた!)からよしとする!」。こんな判断も一つではないでしょうか。
ちなみにフェアトレード先進国、スイスの国民一人当たりの年間購入金額は11267円*1。ここまでいくと社会全体の変革が必要ですね。
*1 【国内海外フェアトレード市場動向】国内市場規模131.3億円とコロナ禍にも関わらず伸張
3.暮らし方を見直す
消費量が多いと高いものは選びにくくなりますが、消費量を減らせば多少高いものも選べるようになります。そうは言っても消費量はなかなか減らせない、と思っていませんか。案外そうでもないんです。
たとえばペットボトル飲料。手軽で便利な選択ですが、500mlの緑茶を140円で買ったとすると200mlあたり56円(しかもプラスチックごみが発生)。自分で緑茶を選んだ場合、有機JAS認証のついた540円/50gの緑茶を選んだとしても200mlあたり21.6円(ごみは茶葉だけ)とかなりお得です※2。もしペットボトルと同じ単価でOKとするとかなりいい茶葉を購入でき、ちょっとしたプチ贅沢を楽しめます。
この他にも服や日用雑貨、食材なども考え方、暮らし方によっては楽しく減らせて、環境負荷が減らせるものも結構あります。これもまた、全てにおいて消費量を減らすとなるとしんどいので、「こうやったらどうかな?」と創意工夫を楽しみながら実践することをおすすめします。
※2 参考:「ごみ減らし役立ちハンドブック〜容器包装編〜」 NPO法人環境市民 堀孝弘著
4.声を上げる
そうは言ってもやっぱりエシカル商品は高くて買えない!という時だってあります。そんな時には「声を上げる」のはどうでしょうか。「声を上げる」といっても、街頭に出てシュプレヒコールを上げるといったたいそうなことではありません。「フェアトレードチョコを置いてもらえませんか」「この製品をつくっている労働者の人権はちゃんと守られているのでしょうか」などリクエストや質問を、スーパーなどの小売、製造メーカーなどに届けるのです。
そんなことして何か変わるのか?と思われるかもしれませんが、企業は私たちが思うよりも案外消費者の声を気にしています。以前、オーガニックの食材を届ける会社で商品企画を担当していた時にはお客様からいただいたメッセージはほとんど全て目を通していました。いただいた声をもとに商品づくりをしたこともあります。
また、なぜ環境保全のための行動を取らないのかといった問いに対し、「消費者からの要求がないから」と答える企業も少なくありません。だからこそ「声を上げる」ことは重要なのです。
以前、スーパーに対してエシカル消費の取り組みについて質問をしたところ、学習会を開催してくれたこともありました(リンク)。エシカルな商品を販売しているスーパーやメーカーに「ぜひ続けて販売してほしい」といった励ましメッセージを送ることもあります。企業の中でがんばっている人を応援するのもいいですね!
さて、お財布が厳しい中でのエシカル消費について考えてきましたがいかがでしたでしょうか。今回は限られたお財布の中でエシカル消費を何とか実践し続ける、という視点で考えを整理しましたが、一方で、社会全体としては所得にかかわらず、多くの人がエシカルな消費を選択できるよう政策や社会の仕組みをつくっていく必要があると思います。
長くなりましたが、地球の未来を思い、エシカルな選択を頑張って継続してきた学生さんに敬意を表しつつ、今後の参考になれば幸いです。