コラム

2019/10/29

プラネタリー・バウンダリー 〜地球一つ分の暮らしにシフトを〜

プラネタリー・バウンダリー 〜地球一つ分の暮らしにシフトを〜

昨今の台風被害には目を覆うものがある。各地に広がる浸水被害。暴風によってなぎ倒される電柱や木々。まるで木の葉のように吹き飛ばされる車。

90年代に、NHKスペシャルのCGで見た「未来予想図」がまさに今、目の前で起こっている。
あの時は半信半疑で見ていたのに。

猛烈な台風に森林火災、洪水、旱魃、豪雨、大雪。世界を見渡すと地球は壊れかけているのではないか、と思ってしまう。

 

先日、国連持続可能な開発目標(SDGs)の基礎にもなった「プラネタリー・バウンダリー」、つまり地球の限界に関する概念を提唱したストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム所長の講演を聞く機会があった。

プラネタリー・バウンダリーの指標としては気候変動や化学物質汚染など九つの項目あるが、そのうちの四つ、「気候変動」「生物多様性」「土地利用の変化」「窒素・リンによる汚染」についてはすでに限界点を超えてしまっている、という。
「通りで最近の地球は......」と思ってしまうような研究結果だ。

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限界点を超えると一体どうなるのか。

地球システムは暴走をはじめ、本来であれば地球の気候を安定させてくれるはずの機能が一転、気候を不安定にする要素に変化してしまう。

例えば本来であれば二酸化炭素を吸収する森林が火災により枯れると乾燥し、サバンナと化し、逆に温室効果ガスを排出しはじめたり、凍っていれば白く、太陽の熱を放出するはずの氷床が気温の上昇によって溶けて黒くなり、さらに溶けるという悪循環、フィードバック現象を起こす。

パリ協定では今世紀末までに気温上昇を1.5度に抑えることが合意された。それでも各国の腰は重い。
ストローム氏は、
「経済がどれぐらい耐えられるか、という話に終始しがちだが、これは技術、経済とは別の話。地球、この惑星を2度より低い温度に保たなければ安全ではなくなる、という話だ」と語気を強めた。

 

話を聞いているとお先真っ暗な話題につい気が滅入ってしまう。どうすればいいのか。
ストローム氏の提案は大きく二つ。炭素税の導入と脱炭素の期限を決めること、だった。

人類が大きく舵を切ることができるかどうか。まさに私たちにかかっている。
残された時間はあまりない。滅入ってる暇はないのだ。グレタさんが言うように行動しなくては。

 

※写真は講演会の様子。残念ながらストロームさんはご家族のご事情で来日できず。オンラインで登場。IT技術の恩恵を感じる機会となりました。

 

 

 

 

2019/10/17

壱岐市に続け!気候非常事態宣言

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先日、日本で初めて「気候非常事態宣言」を出された長崎県・壱岐市にインタビューしました。(記事はこちら
長崎(市内ですが)は一年ほど住んだことがあり、自然、食、文化の豊かな、大好きな場所の一つなので個人的にとてもうれしく思いました。

 

衝撃だったのは、宣言の理由が、主な産業の一つである漁業への影響の深刻化。
藻場が減少し、魚が獲れなくなり、漁業を辞める人も出てきているとのことでした。

 

台風15号、19号と、急速に発達し、勢力を保ったまま日本列島を襲う猛烈台風が増えてきました。
19号はなんと、中心気圧958ヘクトパスカルを保ったままアラスカまで到達したそうです(こちら)。海水温が高く、勢力が衰えなかったため、とみられています。驚くべき状況です。


台風だけではありません。世界を見渡せば、森林火災、大旱魃、大洪水、大雪、熱波。
少し調べるだけでも山のように「異常」な状況が世界中で多発していることがすぐにわかります。

これはまさに「気候危機」と言わざるを得ません。

 

壱岐市に続いて、鎌倉市からも宣言が出されましたが(こちら)、今後、多くの自治体や大学、企業などから宣言が出され、気候危機を脱するための強力なイニシアチブが取られることを期待すると同時に、私自身も機会を見つけてアクションを起こしていきたいと思います。

 

写真は壱岐砂浜図鑑より

 

2019/10/10

I made your ○○!

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先日、月から10月1日まで、ファッションブランド BEAMS新宿店で設置されていた、みんな電力さんのプロモーションブースを見てきました。

 

全国地図を模した大きなボード。みんな電力さんに電気を供給する会津電力、千葉エコ・エネルギー、長野県企業局の三つの発電会社が紹介されており、3000円のカードを購入するとその場ですぐに電力が切り替えられる仕組み。その場で、各社から携帯の充電もでき、まるで洋服を選ぶように、気軽にお好みの発電所を選べるような見せ方が秀逸でした。

 

偶然、紹介されている千葉・エコエネルギーの方がおられ、しばし雑談。会話の中で印象的だった言葉がありました。

 

「(発電した)自分たちの電気を使っている人に会えて嬉しかった」

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同社は畑の上に太陽光パネルを設置して発電をしているのですが、夏の畑作業は正直しんどく、そんな時、電気を使っている人の顔が浮かんで励みになるのだそうです。

同じことは電気を使う私たちにも言えそうです。部屋の照明をつけた時、「そういえば、○○さん、畑仕事がんばってるかなあ」と思いを寄せ、電気を大切に使うようになるような気がしました。

 

つくる人と使う人のコミュニケーションはサステナビリティーをすすめる上でとても大切ですが、電気に限らず、今や私たちの身の回りにあるものは誰がどこでどうつくられたのかわからないものばかりで、つくった人とつながるのはそう簡単ではありません。

 

その結果、「見えない誰か」や「見えない問題」に思いを寄せることなく、さまざまな社会問題が起きているとも言えます。その意味でも、今回のアプローチは重要ではないかと思いました。

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写真:今回の展示を機に切り替えた人も結構多い

同じく、遠くなってしまった生産者と消費者の関係を取り戻す、面白い取り組みがあります。

毎年、4月に行われる「ファッションレボリューションキャンペーン」です。ファッションのあり方について考える世界同時キャンペーンで、このキャンペーンのキャッチフレーズが

 

“Who made our clothes?(誰が私の服をつくったの)”

 

これに呼応するように “I made your clothes.”というフリップを持った生産者側の写真が国境を超えてSNSにあふれます。このコミュニケーションによって、自社の服の製造にかかわる労働者の雇用条件などを見直すブランドも現れています。

 

つくる人と使う人がコミュニケーションをとることによってもっとサステナビリティを高められることがある気がしてきました。

 

Who made my [   ]?

I made your [   ]!

 

この会話の先に見てくるものとは……    (続く)

 

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