コラム

2021/06/27

生物多様性問題でもSDGsに貢献できる!

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1992年、地球サミットがブラジルのリオデジャネイロで開催されました。その時に、双子のグローバル条約が採択されました。

 

一つは、国連気候変動枠組条約、そして、もう一つは生物多様性条約です。双子の条約と言われています。気候変動問題と生物多様性問題は、グローバルな取り組みが必要な問題として同時にスタートしたのです。

 

2010年に名古屋で開催された生物多様性条約締約国会議も、もうすでに10年前になります。ここでは、名古屋議定書、そして愛知目標(通称:愛知ターゲット)が採択されました。愛知目標は、SDGsに非常に類似するもので、SDGsは愛知目標を取り込んでいます。愛知目標は、2011年から2020年までが対象期間となっているため、2020年以降の目標は、2030年を期限とするSDGsに整合する形で、今年10月に行われる生物多様性条約第15回締約国会議で再設定される予定です。

 

今や1年に4万種もの生物が絶滅する大絶滅時代と言われています。生物多様性の損失は、すでに一線を超え、食物連鎖のピラミッドの土台にある、分解者である微生物のレベルでも種の絶滅が進んでいると言われています。しかし、「種の大量絶滅時代に突入しているといわれても、実感が湧かない!」という人は多いと思います。これが地球環境問題の特徴です。問題が深刻化し、取り返しがつかなくなった時に、我々の実感湧いてくるという「時差」があります。

しかし、生物多様性が破壊されつつある影響はすでに顕著になりつつあります。

たとえば、気候変動の影響により、生態的・環境的条件の変化が影響し、日本の本州にあったある酒蔵が、北海道に移動したと言うニュースを聞きました。また、オーストラリアの珊瑚の白化現象は、深刻そのもので、ノアの方舟のように、生き残っている種の保存を人工的に研究所などで行っています。

 

昨今のコロナウィルスも、人間の活動範囲と森林といった自然環境の距離が、乱開発等によって縮小した結果、本来、森の中にいたものが人の生息圏に出てきてしまった、と指摘されています。気候変動問題に取り組むだけではなく、生物多様性問題にも積極的に取り組まなくては、人類共通の未来は、落とし穴にはまってしまうかもしれません。SDGsにおいても、もちろん、生物多様性問題への取り組みに関する目標とターゲット群が用意されています。

 

最近、面白いなと感じている、生物多様性保全志向のサステイナブルなビジネスモデルがいくつかあります。そのうちの一つが、サステイナブルなワイナリーの取り組みです。オーガニックワイナリーをつくり、ビオトープ化した結果、ミツバチ、チョウ、トンボ等が帰ってきたり、レッドデータブックに記載されている希少種が生息を始めたりしていると言うのです。もちろん、CO2の吸収にもつながっています。ここで育ったワインは、国際ワインコンクールで金賞を受賞したそうです。

 

もう一つは、ある会社によるオーガニックコットン100%の衣類の取り組みです。

 

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オーガニックコットンは、農薬を使用しないため、畑に生息する生き物を守ることにつながります。また、栽培に従事する女性が農薬被害を被ること、生まれてくる子供の健康への悪影響を回避することにもつながります。そして、女性の就労機会の提供にもつながっています。この会社のプログラムでは、生産に従事する労働者の方々に対しても、ILOやIFCといった国際機関との共同で、ベターワークプログラムを実施し、人権面からの保障も行っていました。

 

さらに、古着を店舗で回収し、バイオエタノール化し、飛行機の燃料に使用することができるというサービスがついていました。また、オーガニックコットン製品の購入1点につき、オーガニックコットンの種2つを生産農家の方々に無料で提供するということです。

 

コットンは植物なので綿を育てることでCO2も吸収され、土壌の質も改善します。また、洗濯によってプラスチック汚染を起こすこともありません。使用によって古くなれば、もちろんお部屋の掃除の雑巾などに活用もできます。オーガニックコットンを通じて、経済的価値と社会的価値の好循環が生まれることと感じさせられました。

 

生物多様性問題も、ビジネスを通じて問題解決に貢献することが可能です。そして、エシカル消費者と手を携えることによって、SDGsに貢献することにつながっていくことが期待できます。

 

(SWAVE シニアアドバイザー 川本 充)

 

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2021/06/21

手前から取ってますか?

手前から取ってますか?

フードロスの半減はSDGs目標12のターゲットの一つでもありますが、なかなかすぐには解決できない難しさがあります。その一つが私たち消費者の消費行動。「商品を後ろから取る」という消費者にとっては何気ない習慣によって、スーパーなどの小売業界で多くのフードロスが発生しています。

そこをなんとか解決しようと消費者庁、農水省、環境省が「てまえどり」キャンペーンをスタートしたようです。たまたま週末、コンビニでみつけたのでパチリ。

こんなことで何か変わるの? と思われる方もおられるかもしれませんが、コープこうべが、2018年に、商品を手前から取ること、値引き商品の積極購入を呼び掛ける「てまえどり」キャンペーンを実施した結果、前年比、約15%削減することに成功。また、アンケートでは、82%がキャンペーンを「よい取り組み」と好意的のとらえ、それでも「新しいものを選びたい」という方は約9%だったそうです。

 

ある調査によると、食品を陳列の棚の奥から取る人はなんと88%*1にもおよぶということですから、この9割近くの消費者の行動が変われば......かなりのフードロスが防げるのではないでしょうか。

今後の進捗とスーパーなどへの広がりに期待です! 

 

 

*1 食品ロス問題ジャーナリスト 井出瑠美さん調査による(対象2411人)


<参考>
てまえどりキャンペーンについてはこちら

井出瑠美さん
「てまえどり」すぐ食べるなら手前からとってね!食品ロスを減らすコープこうべと行政の連携

2021/06/13

あれから28年 気候変動とSDGs

あれから28年 気候変動とSDGs

もう、28年になります

1992年に気候変動枠組条約が採択されてから、既に28年! 京都議定書の採択から、早いもので、23年の月日が経ちました。1997年当時、学生だった筆者は、そのころから、社会の様子をずっと観察し続けてきました。

 

気候変動枠組み条約が採択された1992年にはリオ・サミットも開催され、2002年にはヨハネスブルクサミット、2012年にはリオ+20が開催されてきました。このグローバルな潮流の始まりは、1972年のストックホルム人間環境会議に遡るので、地球環境に関するグローバルな取り組みは、かれこれ48年、半世紀近い月日が流れています。

 

 

「気候変動」というより「気候危機」

 

この間、何が変わったかというと、気候変動の影響が現実のもとなっている、という事実です。

 

台風の発生の頻度が増えたり、一時的な雨量の急激な増加、珊瑚礁が白化したり、大規模な火事等が起こったりしているだけではなく、人々が豊かに生活する機会そのものを奪われ始めています。これまでに排出され、放置されてきた温室効果ガス濃度の高まりによって引き起こされる環境変化によって、人々の人権が侵害されている事態となっています。

 

京都議定書の後継のパリ協定は2015年に採択されました。また、同じく2015年には、SDGsも採択され、その中には気候変動への取り組みの目標も含まれています。

 

そして、2021年春、大国であるアメリカ政府が「2050年に実質ゼロ」を打ち出しました。そして、日本政府も「2050年に実質ゼロの高みに挑戦する」との旨を打ち出しました。まさに、政治の流れが変わった瞬間でした。

 

しかし、どのような方法でそれを実現するか、については、まだ明確化されていません。ただ、この政治的約束は、気候危機を乗り越えていくには欠かせないハードルであると言えます。これを受けて、日本のビジネスの競争条件も気候危機を乗り越えるためのものへと変わっていくでしょう。

 

ESG投資も、投資の条件に温室効果ガス削減を掲げたケースがほとんどです。エシカル消費においても、気候危機への対処は主要なテーマの一つであると言えます。これらは、パリ協定との相乗効果が期待されています。これからビジネスを優位に展開していく条件として、ビジネスによる気候危機への着実な取り組みとその社会発信は欠かすことができないものとなってきています。

 

 

「2050年に実質ゼロ」でも心配ごとがあります

 

しかし、まだひとつ、心配事が残っています。気候の変動の影響は、不可逆的と考えられています。つまり、温室効果ガスの排出を今すぐにゼロにしたとしても原状回復は難しいということです。さらに2030年を超えると、気候の変動影響が大きくなり、挽回が難しくなる、と考えられています。

 

そのためでしょうか、米国の先進的な企業には、2030年までに実質ゼロを宣言したり、過去の排出分にまで遡って削減すると宣言するという企業が現れています。2050年までに実質ゼロという目標は科学的に正しいとされています。しかし、2030年までにできる限りのことをしなければ、「我ら共通の未来」は、気候変動による悪影響が勝る未来になりかねません。

 

ビジネスを通じて、気候危機への対応をはかり、利益を生むビジネスモデルが、今まさに求められていると言えます。

(SWAVE シニアアドバイザー 川本 充)

 

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2021/06/07

エシカル消費をチャンスに

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「エシカル消費」という言葉を耳にすることも随分増えてきました。エシカル消費とは消費のインパクトを深慮して、買い物の際に、環境や人権などのサステナビリティに関する課題の解決に資するものを選択する、というものです。特にサステナビリティに敏感なミレニアルズの支持も得て、いわゆるエシカル消費市場は今急速に拡大しています。

 

このエシカル消費の関心を高めた一つの出来事があります。2013年に、バングラデッシュの首都ダッカで起きた、ラナプラザ商業ビルの崩壊事故です。ファスト・フードならぬ、ファスト・ファッションと呼ばれる、安価で、使い捨ができる衣類でビジネスを行うファンッション企業が、バングラデッシュに工場を置き、商品を生産していました。過酷な労働条件で働く人々の人権は軽視され、さらには、工場そのものが突然崩壊、1000人以上もの人命が失われました。

この事故を機に、先進国の人々は、商品がどのような経緯で自分の手元に届いたのか、なぜ安価に買えるのか、考えるようになりました。自分の消費行動がどんな社会的インパクトを持つのか、遠く離れた国の人々を幸せにしているのか、といったグローバルなサステナビリティ問題への関心が急速に高まる機会となったのです。

 

このような企業が抱えるグローバルな人権問題に対処すべく、国連は、2011年「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択し、国連加盟国に対応を求めました。「ビジネスと人権」の問題といえば、今、中国のウイグル問題に注目が集まっています。中国がウイグルの人たちに対し、強制労働を強いたり、ジェノサイド(集団殺害)と言えるような行為をしているとの指摘から、海外の政府が憂慮し、ウイグルのコットンを使用する製品を受け入れない、という政治問題が生じています。その対象には日本の企業も含まれています。

 

コットン(綿花)自体は、脱プラスチックの観点からも重要な素材です(化繊の場合、洗濯をすると、マイクロファイバーが排水に混ざり、新しいタイプの海洋汚染問題を生じます)。また、オーガニック農法の場合、労働者の健康や環境の保全にも貢献でき、さらには現地の人々の雇用等にもつながります。

 

しかしながら、人権侵害という社会面の問題が生じてしまうと、いくら環境面でよい要素があっても、政治的問題にまでつながってしまいます。ESG投資家がこのような状況を放置することはありません。従って、その様な企業の株価は下がっていく傾向を示しているのが現状です。消費者も同様です。エシカルな消費者は、人権侵害につながるようなそのような商品を購入することを回避します。いわゆるボイコットです。このように、人権に配慮しない企業にとっては、投資家、消費者の両者からの圧力がかかります。逆にいうと配慮している企業は、生き残っていくということになります。

 

持続可能な開発に関する教育が義務教育や大学教育において実践され、また、地球環境問題の悪影響が顕著となってきている現実から、グリーンコンシューマー、エシカルコンシューマーと呼ばれる、エシカル消費を志向する消費者は着実に増えてきています。10年前には、あまり耳にすることのなかった言葉ですが、もう、10年が経過し、今では、トレンディな言葉となりました。

 

このトレンドに敏感に反応し、取り組んでいる企業は、順調に収益を上げていると言われています。ESG・SDGsで高く評価されることで、投資を呼び込み、消費者の支持を得ることができます。また、経済的価値と社会的価値の好循環を生み出すことができ、サステナブルな社会を構築することに貢献できます。日常の衣食住を振り返ると、企業が果たせる役割は無限大と言えるのではないでしょうか。

 

SWAVE シニアアドバイザー 川本 充

 

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2021/06/03

エシカル消費を広げるヒント

エシカルショッピングのお供に

Yahoo! Japanが運営する、人・社会、地域、環境にやさしいエシカル商品を応援するお買い物メディア「エールマーケット」での全20回の連載「わかる、えらぶ、エシカル」特集が終わりました!(3回以降筆者が元原稿を提供)

CO2削減、ごみ削減につながるもの、といったわかりやすいテーマから、一生もの、災害対策、伝統工芸品といった、一見エシカルとの関係性がすぐにはわかりづらいものまで、多様なテーマを切り口にそれぞれのテーマの背景にある問題、どういう商品選びをすれば解決できるのか、さらには具体的にどんな商品があるのかを紹介しました。

改めて書くとなると調べることがたくさんあり、まるでドリルのように毎回書いていました(笑)。17のテーマを書いてみて気づいたことは、エシカル消費と一言でいっても具体的な商品でみていくと、さまざまな見方によってエシカルな視点につながることがある、ということでした。

たとえば災害対策商品。災害対策になる商品とエシカルのつながりってあるだろうか、とはじめは思ったのですが、調べていくうちに、実は災害対策用品は、ミニマムでサステナブルな暮らしを考えるヒントが隠されていることに気づきました詳しくはこちら

郷土料理もしかり。地元のものを食べる、ということはエシカルとの親和性が高そうだと思いつつも、いざ言葉にするとなると案外難しいもの。調べたり考えを深めるうちに、郷土料理に親しむことは地元の自然や伝統文化を知り、守っていくことにつながるという大切な視点に出会いました詳しくはこちら

伝統工芸についてはエシカルの文脈で語られることも比較的多いテーマですが、執筆にあたり改めて調べてみると「元祖サーキュラーエコノミーデザイン」であることを発見。やはり先人に学ぶことは多いと感じました詳しくはこちら

 

エシカル消費、というとどしても認証ラベルがついていないとだめなのでは?、高いのでは?、身の回りにないのでは? と思いがちですが、「長くつかえるかどうか」「無駄を生み出さないかどうか」「輸送エネルギーが多くないかどうか」といった視点で見直すと案外すでに身の回りに該当するものがあることに気づきます。


もちろん、環境や社会に負荷がかかっている部分はないか、確認改善をしていく必要はありますが、一消費者としてはもっと多様な視点を持てれば、エシカルな消費、ライフスタイルを実践する可能性は広がるように思います。

エシカル消費の認知度もずいぶん高まってきました。このムーブメントを定着させるには、なぜエシカルである必要があるのか、背景にある問題は何か、商品のどこがエシカルなのか、こんな問いをもとに売り手と買い手のコミュニケーションを続けていくことが大切だと思います。今回の連載がその手がかりになればこんなにうれしいことはありません。

ぜひエールマーケットさんでのお買い物がてらご一読ください(笑)。自分買いしたくなる!エシカルで素敵な商品がたくさんありますよ。

連載「わかる、えらぶ、エシカル」リンクはこちら 

 

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