コラム
2023/07/08
羽毛リサイクルをしてみると
暑い季節ですが、今日は冬物の話です。先日、どうしても着なくなった羽毛のジャンバーをリサイクルに出しました。「羽毛ってリサイクルできるの?」と思っている皆さん。朗報です。これができるんです!
「Green Down Project」という回収の仕組みがあり、回収した羽毛製品を解体、洗浄し、製品化して販売しています。解体作業は障がい者を雇用して行われ、障がい者雇用の促進にも貢献。再びジャケットなどの製品として生まれ変わり、販売されます。
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清潔さなどを気にされる方もおられるかもしれませんが、JIS基準以上の高い清浄度を設定しており、とてもきれいな状態で再製品化されます。気になる回収場所はこちら。ぜひお家にいらなくなった羽毛製品がある方は持参してみてくださいね。
私が持ち込んだのはURBAN RESEARCH DOORS。持参すると定員さんがすぐに「あ、リサイクルですね」と気づいてくれました。羽毛製品の持ち込みはありますか?と尋ねると「結構ありますよ」とのこと。「まだ使えるものを捨ててしまうのはほんともったいないですよね」としばしリサイクル談義。いろいろ話をしながら、店員さんにまで取り組みの意義や内容がちゃんと浸透していることに感心しました。
最近、さまざまな組織がサステナビリティの取り組みをしていますが、取り組みの意義や内容の浸透が上層部だけにとどまっており、店員や社員にまで伝わっていないがことがよくあり、もったいないなあと思うことがよくあります。
特にBtoCの場合は、店員が取り組みの意義をちゃんと把握し、お客様に伝えられるかどうかはとても重要です。お客様が理解、共感することで、取り組みの拡大や継続につながります。お客様の理解共感が得られなければ、最悪、せっかく立ち上げた取り組みが継続できない、という事態にもなりかねません。
モノによっては、商品のパッケージで伝えるということもあるかもしれませんね。どんな媒体であれ、コミュニケーションループの最後まで気を抜かずに、お客様とのコミュニケーションを大切にしてくださいね。
Green Down Projectについて詳しくはこちら
2023/06/19
手仕事で気づくこと
突然ですが、忙しい時に限って...手間のかかることをしたくなってしまうことってありませんか。
今回、現実逃避的に私がやり始めてしまったのは「らっきょうづくり」。大人になって好きになったらっきょう。いつか自分でつくってみたいな、とずっと思っていたんです。そんな時、良さそうな低農薬の土らっきょうに出会ったのが運の尽き。
まずは、外側の薄皮を剥いていくのですが、これがなかなかの手間。最初は皮が剥けるかんじに妙なやりがいを感じていたものの、だんだん飽きてくる始末。そんな時にちょうど6歳児(娘)がやってきたので、早速手伝ってもらうことに。「らっきょうの皮って面白いねー」と盛り上げてみたのですが、30分もすると「ママ、飽きたからやめてもいい〜?」と早々に去っていきました。
その後、さらに30分ほど、黙々と一人で皮剥きをするハメに...。皮を剥いたら、土を落としながら洗って、傷んだものを取り除き、根っこなどをカット。 いや、なんて手間がかかるんだ...。 でも、作業をしながらいろんな疑問が湧いてきました。
まずは、スーパーで買ったらっきょうの甘酢漬け。よく考えたらなんであんなに大きさが揃っているんでしょう。皮を剥いているとわかるんですが、らっきょうはの大きさは本当にさまざま。同じ大きさに揃えようと思ったら「規格外」だらけになってしまいます。大量生産をする場合はやはり大量の規格外品が捨てられているんでしょうか。
そしてこの手間のかかる作業を一体誰がしているのでしょう。皮はそう簡単には剥けません。爪でちょっとひっかけながら、分厚めの皮はもう一枚剥いて、とよく注意をはらいながら作業をしなければならず、ぼーっと無意識でできるような作業ではありません。もしかすると薬品につけて剥いてしまっているのでしょうか(みかんの缶詰の皮は薬品で剥いていると聞きます)。作業をしている人はちゃんとお給与をもらえているんだろうか。休み時間はあるんだろうか...。ついついいろんな心配事が頭を過ぎります。
農産加工品は、収穫したり、皮を剥いたり、種をとったり、なかなか機械では担えない作業が発生します。時にはそこに児童労働が使われることもあります。でも、自分の娘を見ていて思いますが、子どもは本来飽きっぽく、同じ作業を、しかもたいくつで、時にしんどい作業を何時間を黙ってやるような存在ではありません。もしさせようと思ったら、よほど精神的、肉体的に強制しない限りはやらないのではないかと思います。らっきょの薄皮を剥きながら、ふと、重いカカオの実を運ぶ子どもたちのしんどさを思い浮かべたのでした。
ぷりっと白く光るらっきょうはまるでお風呂にでも入ってこざっぱりしたあの感じ。あとは、塩をまぶして一揉みしたら、一度沸かして冷やした水を入れて1週間。そこからさらに甘酢につけること1週間。できあがったらカレーをつくらなくちゃだなあ。
下ごしらえは2時間ほどかかりましたが、日頃机上で考えがちな環境、社会問題の根本をつかむ貴重な機会になった気がします。
何より、手を動かすのはやっぱり楽しい。本当は、何人かで仕事歌でも歌いながらやると楽しいんだろうなあ。
次は何をつくろうかなあ。現実逃避の旅は続く...笑。
2023/04/24
FabCafe Kyoto Photo tour
新緑の季節。いかがおすごしでしょうか。
3Dプリンタに自動?刺繍機械。何やら面白そうな機械が並んでいます。ここは「FabCafe Kyoto」。
「FabCafe」は大量生産やマーケットの論理に制約されない「FABrication(ものづくり)」と「FABulous(愉快な、素晴らしい)」の2つの意味が込められたクリエイティブスペースとして2012年に東京で誕生しました。その後、ホンコンやメキシコなど14拠点(2023年5月現在)に広がり、多くの人がものづくりを楽しんでいます。
先日、縁あって「FabCafe Kyoto」の中をご案内いただきました。
築約120年の木造建築をリノベーションしてつくられた建物は、まさに温故知新。古いものと新しいものが混じり合ったわくわくする空間でした。
ということで、今回は写真でFabCafe Kyotoツアー!
まずはこちら。品よく輝き、ほどよい存在感を放つ柱。巻いてあるのは西陣織の端材。裏返しにしてあるんだそう。
こんな座布団もつくれちゃいます。これは締め切り前におすすめの「お尻に火がつく座布団」だそうです。私の場合、しょっちゅう必要になりそう......
もう一つこんな座布団も。高性能な刺繍機がいかされてますね。
土壁をわざとみせる仕掛けも。仕上げてしまうと中がみえなくなるのでガラス張りにして中を見られる部分を残したのだそう。構造や素材が見えると「つくり方」のイメージが湧いて、ものづくりのインスピレーションになりそうですね。
こちらは、ユニークな素材を集めた箪笥。左上にある帽子は、話題のキノコレザー! 他にも、魚の皮を使ったレザーなど面白そうな素材がたくさん。箪笥も古いものをアップサイクルしている点に注目。表面をアクリルにした点がポイント。中が見えるのでつい気になって開けたくなります。
こちらは扇風機...ではなく、扇風機をリメイクした楽器だそう! どんな音がなるんでしょうね。
FabCafe Kyoto Photoツアーいかがでしたでしょうか。見ているだけで、「私も何かつくってみようかな」と思わせてくれる不思議な空間でした。
「いろんなモノがコミュニケーションのきっかけになれば、と思って設置している」。
ご案内してくださった方の言葉が心に残りました。確かに何度も、「これは何からできているんだろう?」「どうやってつくったの?」「何をするもの?」と話したくなりました。モノを通じてコミュニケーションを生み出す。こだわってつくられているモノだからこそできる技なのかもしれませんね。
思えば最近は、モノは「買う」ことがほとんど。自分でつくることはとても少なくなりました。その結果、モノとじっくり向き合うことなく、大量生産、大量消費、大量廃棄社会が生み出されているといっても過言ではないように思います。まずは自分で何かをつくってみる。そんなことが案外、この社会の作り直しには大切なのではないか。そんなことを考えさせられた Fab Cafe Kyotoツアーでした。
何より、今回感じたのは、ものづくりのワクワク感! 幼稚園や小学校の頃、時を忘れて工作に没頭した、あの感じです。時間や手間がかかっても、出来上がったものがへぼぴいでも!やっぱり自分の手を動かすって楽しいし、出来上がったものは愛おしい(笑)。
まずは、シンプルにそんな感覚を思い出すところからはじめたいですね。
Fab Cafe Kyotoについてはこちら
*トップの写真は、FabCafe Kyotoの2階からの眺め。東西にお寺があり、ほっとする眺め。
2023/04/03
高いと売れない?
話題の体験型ドーナツカフェ「koe dounts」に行ってきました。天井を覆う竹籠がつくりだす不思議な空間。写真で見たことがあるという方も多いかもしれません。
エシカルドーナツをうたうだけあって、素材には有機小麦や国産小麦、京都美山産の平飼い卵、揚げ油には米油とこだわりの素材が使われていました。値段は、ドーナツチェーン、Mドーナツより若干高め。コーヒーは550円なので倍近いでしょうか。なかなかいいお値段です。
にもかかわらず、レジには長蛇の列ができていました。休日ということもあったとは思いますが、次から次と人が並びます。客層を見ていると、若い方を中心に、観光客とおぼしき方もたくさん。フロアは常に満席でした。
「エシカルなものは高いことが多く、売れない。消費者になかなか買ってもらえない」。
なんとなく私たちはそう思い込んでいないでしょうか。電通の「エシカル消費 意識調査2022」でもエシカル消費を実践する一番の条件としてあげられたのは「価格が同じだったら」(44%)でした*。
でも本当にそうでしょうか?
今回の「koe dounuts」のように、価格が高くても、大人気のお店、商品、サービスはあります。その背景にはさまざまな工夫があるでしょう。今回の場合であれば、建築家・隈研吾氏が手がけたインスタ映えする内装かもしれません。もちろん美味しさもあるでしょう。
店舗では見えない、流通などの工夫もあるかもしれません。以前ある企業の方は、エシカルな商品を販売するためにIT技術を導入し、流通コストを下げて価格上昇分を吸収した、とおっしゃっていました。その結果、仕事の効率化もUPし、会社全体としてもメリットがあったそうです。
企業の方と話していると「(エシカルな商品なので)高くて消費者は買わないんですよ」というコメントを聞くことがしばしばあります。しかし、「koe dounts」をみていると必ずしも「高い=買わない」という構図ではないように思います。
コミュニケーションの視点からみると、「koe dounts」の場合、ドーナツの原材料から製造工程に至るまで、包み隠さずすべて「見える化」していることが印象的でした。たとえば、通常、店頭で販売されるパンやお惣菜などは原材料表示をされていないことがほとんどですが、表示されていることによって生まれる安心は高いように思います。
ファクトリー店舗を打ち出しているだけあって、小麦を石臼で挽いて、ドーナツを揚げ、デコレートする。製造工程を見える化することによる、面白さや安心感もありそうです。ちょうど目の前で、抹茶味のドーナツをつくっていたので素材について質問してみたのですがいろいろ答えてくれました。
娘はお兄さんが抹茶ドーナツづくりの工程を見せてくれたのがうれしかったようですっかりファンに。
店舗から商品に至るまでインスタ映えを意識したつくりも人気のカギでしょう。お店に入ってくるなり、スマホで写真を撮る人の多いこと。「撮られること」を意識して「撮りたくなる風景」をつくることも今のご時世ならではのポイントと言えそうです。
テーブルにドーナツを置いてロゴをバックに写真が撮れる。みなさん慣れた動作でサクサク写真を撮ってました。ちなみに店舗に使われている竹籠は京都嵐山の竹を使用した伝統的な六ツ目編みのかごで店内に572個もあるそうです!
フリップと一緒に撮ることも。
「koe dounts」に限らず、上手なコミュニケーションで、エシカルな商品を上手に販売しているブランドが増えてきました。「エシカル商品は高いから買ってもらえない」「意義が伝わらないから選ばれない」「だから積極的に販売していない」そんな時代はもう終わりではないでしょうか。
どうやったらエシカルな商品が選ばれるか、買ってもらえるか、ファンになってもらえるか。ヒントはたくさんありそうです。
*電通「エシカル消費 意識調査2022」(図5)
2023/03/02
虫が遊んだ跡なのね!
きんかんに伊予柑、ぽんかんに不知火。柑橘類の美味しい季節がやってきました。
冬の間に縮こまった身体を、ぐっと引き伸ばしてくれるような柑橘類の香りに癒されながら、果汁たっぷりなみかんをいただくのはなんとも幸せです。
さて、我が家では環境や社会配慮に熱心な生活クラブで食材を頼んでいるのですが、今回届いた「いよかん」には黒っぽい部分がありました。果物に添えられた説明を読んでみると......
「果皮が黒くなるわけーー昆虫のカイガラムシの分泌物により黒くなります。暖かい時期にお尻から砂糖水のような液体を出し、蟻に助けてもらう、共生の役目をしています。この液体が後に黒変します。簡単な農薬で防除できますが、福岡自然農園では一切農薬を使用しないため一定量発生します。味や健康には影響ありません。栽培でも減らす努力をしています」
なるほどそういうことなのか、と納得していると、ちょうどそこに6歳の娘がやってきました。事情をざっと説明すると「カイガラムシと蟻が仲良くした跡なのね」と一言。そう言われると、黒っぽい跡がなんだか素敵な印に思えてきました。
ちょっと黒くなる。ちょっと色が悪くなる。 農産物にはこうした「ちょっと」を抑えるがために農薬を使わざるを得ない。そんな話を農家さんから聞いたことがあります。でも今回のような説明があれば、農薬を使用せずともおさまるケースも結構あるんじゃないでしょうか。
以前、会員制のオーガニック食材を販売する会社で働いていた時のこと。 保存料を使っていないパンを販売していたのですが、夏場はカビが生えやすく、新しく会員になったお客さんからしばしばお叱り電話がきていました。でも、事情を説明すると大抵のみなさんは納得して、「カビが生えてよかった!」と思っていただけるほど変化していました(汗。決してカビが生えていいわけでもないのですが....)。
食べ物を自分で育てる人が少なくなった今。食べ物が虫や鳥とどう関わりながら育つのか。そんなことを丁寧に伝えていくことによって、減らしていける環境・社会負荷はまだまだたくさんあると思います。
きっと「カメムシと蟻」の話を読んだ人たちも「なあんだそうだったんだ!」と納得しているはず......
伝えれば世界は変わる! そんな確信を新たにしながらいただいた「いよかん」はいつもに増して美味しかったです♪