コラム

2025/04/03

ここはビーチ?

ここはビーチ?

前回に続き、ウータン森と生活を考える会が主催するボルネオ島エコツアー参加レポートをお伝えします。


ここはビーチ? 
そう思ってしまうほどの白い砂場が広がっています。

ここは、インドネシア・ボルネオ島の内陸部、タンジュン・プティン国立公園エリア。海からは離れた内陸部。ではなぜ、熱帯雨林のど真ん中でまるでビーチのような砂が広がっているのでしょうか。 

元々、熱帯雨林では年中多くの雨が降るので、土壌の養分が雨水によって長され、砂のような粗い鉱物が残りやすいのだそうです。高温多湿で微生物が活発に活動するため、葉や枝が分解されやすく、その結果、砂が残りやすいという要因もあるようです。

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ただ、通常は、樹木が生い茂り、枝葉がたくさん落ちて覆い被さるため砂が剥き出しになることはありません。訪れた場所は、森林火災や金の採掘のために木がなくなり、その結果、覆うものがないためまるでビーチのようになってしまったというわけです。

 

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火災や伐採がなければ、地面にはたくさんの落ち葉があって、歩くとフワフワしています。

 

こちらは金の採掘跡地。伐採から20年経ったところだそうですが、木はまばらで足元にシダや低木が生い茂る程度。元に戻るには長い月日がかかることがわかります。

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この状況をなんとか打開しようと活動しているのが今回、お世話になったタンジュン・ハラパン村で2019年に立ち上がったTanjung Lestari(タンジュン・レスタリ)のみなさん。火災や金の採掘などで荒廃してしまった土地での植林や小学校での環境教育、コミュニティ支援、そしてエコツーリズムなどの事業をしています。最近は消火や火災対策も重要な活動の一つ。一度燃え広がると消火するのはとても大変なのでパトロールも強化していました。

 

ユーモアに溢れていたり、料理が得意だったり、恥ずかしがり屋さんだったり、個性豊かなみなさん。 


森林保全に熱心な彼らですが、過去には彼らが生活するタンジュン・ハラパン村が村の土地をパーム油のプランテーション会社に売ってしまった過去がありました。企業から打診があり、タンジュン・レスタリのリーダー、アドさんをはじめ何人かの方が反対したものの、プランテーションができることで雇用が生まれ、現金収入が入るというメリットに対して代案を出すことができず、やむなく売り渡すことになったそうです。

 

この点は私にとって盲点でした。

 

つまり、現地を訪れるまでは、村の皆さんは「森を守る側」だと思い込んでいました。でも実際にはプランテーションの拡大の一助でもあったというのは衝撃的でした。でもだからといって、村のみなさんを非難したいわけでは決してありません。

 

原発や工場の建設など、環境破壊につながるとわかっていても、経済メリットには抗うことができず、村が、まちが二分してしまう...これはボルネオだけではなく全世界で起こっています。もし自分が住んでいる地域に同じ話があったら、反対して、周りを説得できただろうか、と想像するとその難しさが痛いほど想像できました。

 

もしかすると、賛成していた皆さんであっても、代々大切にしてきた村の土地を手放すのはとても辛かったのではないでしょうか。

 

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300メートル先まで聞こえる葉っぱの笛を教えてくれるアドさん。

 

アドさんたちは、プランテーションを全否定はしていませんでした。ただ、バランスがあるだろう、と。森を守りながら、多少、プランテーションを営みながら収入を得る方法もあるのではないか。おそらく、明確な解はだれも持ち合わせておらず、実践あるのみなのだろうと思います。

 

今、タンジュン・レスタリメンバーは、雇用や収入も確保していくため、エコツーリズムなどに力を入れ、若い人が森や村を守りながら暮らしていける方法を模索しています。環境と経済の両立と一言で言っても、その実現は一筋縄ではありません。常にLearn by doing。彼らのチャレンジが実を結び、豊かな森の保全につながるように応援し続けていきたいと思います。

 

次回は、ホームステイ先で驚きのいろいろ!を紹介したいと思います。

 

 

 

2025/03/19

アブラヤシの実ってカタッ!

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あー、これだ....。広大な土地に広がるアブラヤシのプランテーション。ボルネオ島に着陸する前に上空からみた景色に、これまで何度も見てきた写真を思い出しました。定規で線を引いたようにまっすぐ伸びる道。整然と並ぶアブラヤシ。

 

パーム油の問題は何十年も聞いてきたものの、現地は一体どんな感じなんだろう?、そこに暮らしている人はどんな思いでいるんだろう? そんな思いを胸に、今回、ウータン森と生活を考える会が主催するボルネオ島エコツアーに参加してきました。

到着して早速向かったのは、滞在先の村に隣接するアブラヤシ農園。現場でみると大人の背丈の2、3倍はありそう。

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実際にアブラヤシの実を落としてみようということでやってみたのですが......これがうんともすんとも動かない! 「なんて固いんだ!」そこで、まずは実の手前にある葉を落とそうということで茎の部分に刃を入れてみるもののこれまた強い繊維質で刃が入りません。やっているうちに腕がワナワナ......。全く使いものにならない自分を痛感しました。

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今度は落ちた実を抱えてみることにチャレンジ。一つの実の重さはだいたい15kgほど。米袋でイメージすると検討がつきやすいかもしれません。腰を落として、よいしょっ!と持ち上げる感じでした。

プランテーションで働く場合、実を落とす方は1日85個、落としたものを拾って運ぶ方は150個が基本のノルマだそう。月の収入は日本円にして3-4万円ということなので、インドネシアの平均的な金額ではある模様。今回訪れた場所では、農薬、除草剤の散布もあるのですが、マスクや長靴の支給もあり、ケガをした場合の労災もあるということでちょっとほっとしました。

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直径30センチ強ぐらい。実の先はトゲトゲしていて素手で触ると痛い。

 

パーム油プランテーションは、環境破壊に加え、低賃金、長時間労働、児童労働(今回、訪問した場所では児童労働ない、ということでした)など労働問題が指摘され続けているだけに、今回、実際の作業をさせていただいたのは貴重な経験になりました。

 

今回、もう一つ学んだことがありました。

それはRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証を取得している森の状態です。考えてみれば当たり前なのですが、RSPO認証を取得しているからといって、多様な動植物が生息しているわけではありません。見た目は延々とアブラヤシが続いており、オランウータンがいるような森とは全く違います。恥ずかしながら、認証を得たプランテーションは生態系も豊かなんだろう、という勝手な妄想をしてしまっていたので...実際に現場に行ってみてはっとしました。

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RSPO認証を取得した森を歩く。約20年ほどの木だという。植えてから3年で収穫できる。

もちろん、現状では環境・社会面の負荷を減らしていくために、認証取得を進め、パーム油が使われている商品を選ぶ場合は認証油を使ったものを選ぶことが大事だと思います。ただ、認証は万能ではない、という点もしっかりと覚えておくべきだと痛感しました。

 

次回は、森を再生する取り組みをお伝えします!

 

 

2025/01/05

世界報道写真展2024京都

世界報道写真展2024京都

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

さて、昨年末、「世界報道写真展2024京都」に行ってきました。

これは、世界報道写真財団(World Press Photo Foundation)が開催するWorld Press Photo Contest(世界報道写真コンテスト)の入賞作品を展示するもので毎年日本で開催されてきましたが、2021年を最後に休止していました。今回、京都新聞の松村和彦さんの連載、「700万人時代-認知症とともに生きる」の写真シリーズが2024年のコンテストで入賞したことをきっかけに復活しました。

 

冒頭の写真はドイツ。白い雨合羽に身を包んだ人々の列。一体何のための列だろうと思って解説を読むと、ドイツ、ラインラント地方で炭鉱開発に反対するデモ隊の人々との説明書きが。環境先進国ドイツで炭鉱開発? と目を疑いましたが、実は70年代から露天掘り炭鉱の用地を確保するために森林破壊がなされてきたとのこと。デモ隊は森や村の一部を占拠し、破壊される予定だった6つの村の内、5つの村、森の一部を守ることに成功したと解説されていました。


炭鉱開発は開発地域の自然を破壊するだけではなく、取り出した石炭を燃やせば当然CO2が排出され、気候変動が加速します。つまりドイツだけの問題ではありません。その意味で、遠く離れたドイツで、地域、さらには世界のことを思って戦ってくれている人たちがいることを知って胸が熱くなりました。


この他にも気候変動の影響による森林火災や干ばつ、ガザをはじめとする戦争、地震などの災害に苦しむ人々、そうした困難に果敢に立ち向かう人々。レンズが捉えた世界の「今」に、深い悲しみと共感、そして問題に立ち向かい続けることの大切さ、勇気を感じさせられました。


2025年も微力ではありますが、世界が少しでもよりよい方向に向かうよう、コミュニケーションを通じて尽力していきたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

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「世界報道写真展2024京都」は写真の撮影が認められており、会場で撮影した写真を使用しております。この写真の撮影はDaniel Chatardさん

 

 

 

 

 

 

 

 

2024/11/28

グリーン車のおしぼりに思うこと

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最近、早朝、もしくは夜遅に新幹線に乗るときはときどき、グリーン車に乗るようになりました。
たかが椅子、されど椅子。降りた後の疲れが全然違います。昔は九州から東京まで18きっぷで行ってもへっちゃらだったのに。寄る年波には勝てません。

それはさておき、乗るといつももやっとすることがあります。それは、乗車すると配られるこのおしぼり。これはこれで手を拭いたり、夏は汗を拭いたりするのに便利なのですが、気になるのはおしぼりが入っている袋の広告。

「男のエステ ダンディハウス」。文字通り、男性向けのエステの広告です。

確かに、グリーン車はざっと見る限り、男性が多いと思います。あくまで見かけ判断ですが、中でもバリバリ仕事をしてそれなりの地位についていそうな方が多いです。その意味では、グリーン車の客層≒男性で自分の容姿にお金をかけられる層ということで、ターゲティングとしてはぴったりなのでしょう。

でもなんかもやっとします。

グリーン車に乗るのは、経済的、社会的にある程度成功してエステにお金をかけられる男性、と決めつけているこの感じ。ジェンダー平等ランキングがG7中、最低を記録し続ける日本の現実がダダ漏れです*。

最近は化粧品やファッションなどの分野では、色や形、ネーミングや仕様など、性別に限らず使えるように工夫された「ジェンダーフリー」「ジェンダーレス」マーケティングも増えてきました。よく考えたらなんでこれまで別々だったんだっけ?と思うものも少なくありません。こうしたマーケティングは特にZ世代に好感を得ているとききます。

もしZ世代がこのグリーン車のおしぼりの広告をみたら、どう思うでしょうか? Z世代はまだグリーン車には乗らないから構わない?
その感覚とマーケティングの積み重ねが、ジェンダーランキング120位前後をうろうろする日本につながっているのではないでしょうか。

たかが椅子、されど椅子。たかが広告、されど広告です。
小さな積み重ねが「バイアス」につながる、逆に言えば、社会を変える力になると捉えるべきです。

JR東海さん、乗り心地だけではなく、社会的影響をも考えた、センスあるマーケティングを期待しています。


*2024年版「ジェンダーギャップ報告書」(世界経済フォーラム(WEF))によると、日本は146カ国中、118位で主要7カ国(G7)では最下位。

 

 

 

 

2024/10/24

年の半分は「ほぼ夏」

年の半分は「ほぼ夏」

食欲の秋、読書の秋、芸術の秋。秋はほんとに忙しいですね。
気温も下がって落ち着いていろいろ楽しみたい秋なのに、10月24日、本日お昼の京都の気温は25度。ほぼ、夏日(25度以上)です。

「温暖化だねえ」と世間話に終わらせている場合ではありません。

EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は2024年がまたもや史上最高に暑かった夏になるだろうと予測。京都に限定すれば、今年、1年のうち45%が夏日になったとのこと。つまり、年の半分はほぼ夏になったということです。

農業への影響はおろか、生態系への影響を考えるとまさに「気候危機」と言っていい状況です。

では「ファッションの秋」ということで、気候変動にファッション業界はどう対応しているのでしょうか。最近一つ記事を書きました。

それによると「サプライチェーンを含めた脱炭素化の情報開示は3分の1以下」。情報を出さなければ始まらないのに、この状況です。

情報開示=サステナブルでは決してありませんが、サステナビリティを促進する上でまずやるべき「最初の一歩」です。

ファッションブランドが特に脱炭素化に関する情報を開示すべき理由はもう一つあります。それは、服の製造から廃棄までのプロセスのうち、CO2の9割が発生するのは製造段階だからです。

つまり、消費者サイドでできることがないわけではありませんが、ファッションブランドがCO2削減に取り組まなければ大半を占めるCO2は削減できない、ということです。

詳しくはぜひこちらの記事をご一読ください。

まもなく11月には29回目の国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)がアゼルバイジャン共和国で開催されます。国家レベルでも、企業レベルでも、踏み込んだアクションが取られることを期待して止みません。

 

(写真)家の近くの公園のくぬぎ。小さい頃からどんぐりが大好きで見つけるとどうしても拾ってしまう。とくにくぬぎは私にとって王様👑的な存在。

 

 

 

参考
世界の平均気温 8月は去年に並んで1940年以降で最高に

京都市「霜降」に夏日の年間記録を更新 1年の45%「夏」四季の概念崩壊

 

 

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