コラム

2024/03/03

重箱の隅? サステナビリティ浸透度のバロメーター

重箱の隅? サステナビリティ浸透度のバロメーター

ブランディングは決してブランドカラーやロゴを決めたりすることではない。どこを切っても、そのブランドが現れること。

ブランディングを専門とする方からよく聞く言葉ですが、最近つくづくそうだなあと思います。

先日、朝に銀座を歩いていた時のこと。とあるブランド店の前を通ると...清掃をしている方の制服に目が止まりました。よく見かける、水色や青といった清掃員の方の制服とはかけ離れたデザイン。こんなところまで統一するのか、と驚かされました(写真)。

cleaning.jpg

 
サステナビリティ分野はどうでしょうか。

各社、高らかにさまざまな目標を掲げていますが、いざ打ち合わせに行くと、使い捨てのプラスチック容器で飲み物が出てきたり(飲み物をいただけることは自体はありがたいのですが...)、夏はキンキンに、冬は暑いほど冷暖房が効いていたり、お昼になると社員が続々とランチをレジ袋に入れて戻ってきたり、多様性を理解しているとは言い難い言動があったり...違和感を感じることもしばしば。

あるセミナーで、大手のブランディングを多く手掛けている方が「イベントでペットボトル飲料がずらりと並んでいたりするとその会社のブランドはそんなもんなんだな、と思う」とおっしゃっていました。

重箱の隅のようにも思えるかもしれませんが、こうした「こまごまとしたこと」はその組織のサステナビリティがどこまで浸透しているかの証左だと思います。厳しいようですが十分に浸透していなければ、社員の行動もそれなりに、なるでしょう。社員一人ひとりに浸透してこそ、その上に積み上がる、組織の戦略や目標が形になるもの。十分に浸透していなければ、その上にいかに立派な目標が掲げられても、実現は困難に直面するでしょう。その意味では、「こまごましたこと」を重箱の隅とは言っていられなさそうです(かといって都度、目くじらをたてて注意するものではありませんが)。

サステナビリティも「かくあるべし」。ブランドものの制服に身を包み、掃除をする方の背中を見ながら感慨深く思った朝でした。

 

2024/02/18

ケージフリー卵生産の拡大を願って

ケージフリー卵生産の拡大を願って

ケージフリー卵生産の推進を支援するグローバルフードパートナーズ(Global Food Partners)の広報支援を行いました。

グローバルフードパートナーズはシンガポールに拠点を置くコンサルティング会社です。 ケージフリー卵生産のベストプラクティスに向けた持続可能かつ経済的に実行可能な移行を実現するために食品企業や農家、業界ステークホルダーを支援し専門的知識・技能を提供しています。特に中国やインドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイを拠点に事業を行っています。

今回、日本での展開のため、オンラインセミナーを開催することになり、そのための広報支援を行いました。SNSも開設したばかりで会社の認知度もこれから、どいう段階でしたので、登壇者からメッセージをいただき配信機会を創出 (サイトはこちら)。事前に内容を理解し、より関心を持った方々に参加いただきました。その他、メディアへの個別アプローチやメディア資料の作成支援などを行いました。

28081699_s.jpg

日本の一人あたりの卵消費量は多く、国際鶏卵委員会(IEC)の調査(2021年)によると337個と、メキシコの409個についで世界で2位を記録するなど常に上位にランクインしています(詳細)。しかし、日本の採卵養鶏の99%は「
バタリーケージ」と呼ばれる、A4サイズほどの広さの金網でつくられたかごの中での飼育されている推定されています。1日に1万回以上も土をつつく鶏の性質が確保される状況には程遠いのが現状です。ストレスを抱えた鶏は仲間をつつくため、嘴を切る処置まで行うなどさらなる悪循環を生み出し、アニマルウェルフェアの観点からみると深刻な問題を抱えています。

一方、世界はバタリーケージを利用した養鶏を禁止した「ケージフリー」生産を加速させています。EUは2012年にバタリーケージを禁止。米国ではカリフォルニア州やミシガン州、オハイオ州など州レベルでの禁止が進んでいます。ヒルトンやマリオットなどの観光業をはじめ、企業レベルでもケージフリー卵への移行が進んでいます。スターバックスやマクドナルドなども米国を中心に100%移行していますが、日本を含むアジア地域では、供給不足や消費者の関心度の低さが移行を阻む要因となっています。

今回のセミナーでは、アジア各国が積極的にケージフリー生産への移行に動き出していること、また、生産者は需要があれば、移行に前向きであることもわかりました。重要になってくるのは、養鶏家への技術的な支援です。その点、豊富な知見を持つグローバルフードパートナーズが支援していくことによって、今後、アジア、そして日本が、ケージフリー生産をリードしていくことを期待しています。

今回はその足がかりとなるセミナーの広報支援を行うことができ、とても光栄でした。


グローバルフードパートナーズでは生産者向けのオンライン講座も行っています。政府や企業の政策立案者の方がケージフリー生産の理解をすすめるためにもおすすめです。ぜひ関心のある方はご利用ください(こちら

 

参考:スタバやマックも卵革命 広がる「ニワトリの権利」

   日本のケージフリー宣言企業一覧

 

 

 

 

 

 

2024/01/13

「反対し続けてくれている」その心は

mochibana.jpg

昨年末、「花餅」づくりのワークショップに参加してきました。

ワークショップを企画してくださった農家さんのお話によると、その昔、お正月の時期に、お花の代わりにとつくられはじめたのがはじまりとか。考えてみれば冬は花がほとんどないのが当たり前。今ではいつでもどこでもお花が手に入りますが栽培の際には加温をするなど、環境に負荷がかかっているのかもしれません。

まずは用意してくださった梅の木選び。枝ぶりを見ながらできあがりを妄想するのは楽しいものです。次はお餅をつける作業。つきたてのお餅をつまみ食いしながらの作業の楽しいこと! 手も口も(笑)動かしながら制作にはげみました。赤いお餅は、人口着色料ではなく、黒米を使用。落ち着きある淡い紫がおしゃれです。あるモノを利用して「華やかさ」を表現しようとした昔の人のクリエイティビティーは今に勝るとも劣らないものがありますね!

さて、主催してくださったのは、作り手さんとの対話を大切にしながら、持続可能性を大切にした乾物やお野菜、雑貨などを販売している「すみれや」さん。こだわりの商品が盛りだくさんでついお財布の紐が緩んじゃいます。 特に立ち止まったのがこちら。

 

hiziki.jpg


「祝島の人たちは、対岸に予定されている上関原発建設に35年以上前から反対し続けてくれています」


説明にあるように、このひじきは対岸で原発の建設が計画されている、山口県の祝島という場所でつくられています。


「反対運動といってもその人たちの問題だから当然しょ?」と思うかもしれません。でも本当にそう言い切れるでしょうか。


原発事故が一度起きれば、その地域の人たちだけの問題では終わらないことは東京電力福島第一原子力発電所の事故で明白です。核物質の性質を考えれば原発はどこにもあるべきものではありません。 反対運動は、気持ちも体力も消耗します。それを数十年も続けるというのは相当なものです。かといって建設予定地から離れている私たちが運動に参加したりするのは難しいもの。そう考えると「反対し続けてくれている」という表現は的を得た表現だなあと思いました。

作り手への深い理解、そこから生まれる尊敬や感謝の念が垣間見られる表現。私もこういう感性を持ってコミュニケーションをしていきたいな、と思わされました。ちなみに、このひじきはほんとに味わい深くて、軽く茹でて、さいの目に切ったお豆腐と一緒に、ポン酢とごま油でさっと和えるだけで絶品です。我が家では一瞬にしてなくなる人気レシピ。ぜひお試しを。

 

すみれや ウェブサイトはこちら

 

 

2024/01/05

エアコン環境ダンピングに関する報告書 メディアワークを支援

エアコン環境ダンピングに関する報告書 メディアワークを支援

家電製品を通じた環境負荷低減、人々のエネルギーアクセス拡大をリードする国際NGO、CLASPが、ガバナンスと持続可能な開発のための研究所 (IGSD)​​と共同で発行した、東南アジアのエアコン市場に関する報告書リリースのメディアワークを支援しました(2023年9月)。

 

調査は、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの6市場を​​対象に行われました。その結果、気候変動を加速する低効率エアコンが74%を占め、日本を含む多国籍家電メーカーが製造・輸出にかかわっていることが明らかになりました。

 

こうしたエネルギー効率の悪いエアコンは、多国籍企業の母国の最低エネルギー基準を満たしていません。報告書は、ダブルスタンダードが横行し、環境ダンピング状態にある、と指摘しています。

 

主な原因は旧式の冷媒(R-410A)を使用していること。R-410Aはオゾン層を破壊する物質に関する​​モントリオール議定書の下で廃止が予定されている冷媒で、地球温暖化係数は2,088、二酸化炭素の2,000倍以上もの温室効果があります。

 

気候変動の影響でエアコンを購入する人は急増しており、販売台数は今後20年間で6倍に増加すると試算されています。このままでは、低効率のエアコンがさらに気候変動を加速させかねません。

 

今回のリリースでは、まず、製造業者をはじめ、多くの関係者に知ってもらい、行動を起こしてほしい、ということから、メディアだけではなく、関係企業へのアプローチも行いました。その結果、数社からダイアログの依頼をいただきました。

 

企業の事業戦略や国の法規制なども関連することから解決には時間がかかりそうな案件ですが、低効率エアコンの蔓延は気候変動の加速、オゾン層の破壊、消費者が高い電気代を払い続けなくてはいけなくなるといった深刻な問題を引き起こします。

この報告書がきっかけとなり、解決に向けたアクションが早急に取られることを強く期待します。

 

 

 

2024/01/04

「水銀を過去のものに」蛍光灯の廃止に向けたメディアワークサポート

「水銀を過去のものに」蛍光灯の廃止に向けたメディアワークサポート

2027年までに蛍光灯の生産、輸出入は禁止することが決定。

 

2023年10月末から11月上旬にかけて行われた水銀に関する水俣条約第5回締約国会議で、ついに蛍光灯の廃止年が決定しました*1。今回私は、決定に至るまでの間、国際NGO、CLASPが主導するキャンペーン、CLiC(Clean Lighting Coalition、通称クリック)を通じて、日本における蛍光灯廃止に向けたメディアワークを中心とする支援を行いました。

 

水俣条約は、水銀の一次採掘から貿易、水銀添加製品や製造工程での水銀利用、大気への排出や水・土壌への放出、水銀廃棄物に至るまで、水銀が人の健康や環境に与えるリスクを低減するための包括的な規制を行い、世界中の製品や製造過程から水銀除去を目指して2013年に採択され、2023年12月現在で147か国が採択しています。

 

水銀を使用する製品は、化粧品や電池、医療器具などさまざまありますが、その一つが蛍光灯です。第四回締約国会議(2022年)でも蛍光灯の廃止が議論されたのですが、日本を含む数カ国が反対し、決定に至りませんでした。その結果、日本がCLiCのキャンペーン対象になったというわけです。

 

日本は毎年約9トン弱の水銀が今でも使われていますが、その35%を蛍光灯が占めています*2。しかし考えてみれば不思議です。蛍光灯にはLEDという代替手段があります。購入時に多少コストはかかりますが、蛍光灯に比べ寿命は約3倍、消費電力は約半分と言われています。技術大国と言われる日本がなぜ蛍光灯に固執しているのか。しかも水俣病を経験した当事国がなぜ? にわかには理解できませんでした。

 

キャンペーンとしては、プレスリリースを通じたメディアワーク、関係するNGOとの関係構築、そして、最終的には担当省庁とのエンゲージメントを行いました。担当省庁とのエンゲージメントは広報の域を超えているのでは? と思う方もおられるかもしれませんが、私は、広報の定義で述べられているように、広報とはPublic Relation、つまり、目的の達成をめざして、ステークホルダーとのよりよい関係構築を行うことだと捉えています。

 

詳しくは省略しますが、問題の根幹は、純粋にテクニカル面だということが判明したので、メディアを活用したキャンペーンから、決定権を握る省庁とのダイアログに切り替え、データに基づいた議論に移行しました(よくあるNGOのキャンペーンの準備もしていましたが...)。会議結果にはさまざまな要因が影響するので今回のアプローチだけが成功の秘訣だったわけでは決してありませんが、結果的に合意に至ることができ安堵しました。

今回は、照明に関連する技術的知識を把握していくこと、さらには、全てが英語でのコミュニケーションというハードルもありましたが、前者については、有限会社ひのでやエコライフさんがテクニカルアドバイザーとして常にインプットをしてくださったので大変助かりました。

 

個人的には、蛍光灯の廃止という世界的な決定に関われたことが大変光栄でした。関わりはじめたのは3月、会議の開催は10月と聞き、非常に短い期間でゴールに到達できるのか、常に緊張感がありましたが、多くの皆さんの助けを得て走り切ることができました。

 

キャンペーンをリードしてくれたCLiCメンバー、日本でのキャンペーン展開に協力してくれた気候ネットワークをはじめとする環境NGOの皆さん、そして、この案件にお誘いいただき、いつも鮮やかなデータドリブンアイデアを出してくれた、ひのでやエコライフ研究所の皆さんに心より感謝申し上げます。



<プレスリリース>

 

*1 生産、輸出入は禁止されますが、現在使用しているものの継続使用、在庫の販売は禁止対象ではありません。

*2 https://www.env.go.jp/chemi/tmms/keiken.html(2023年12月時点確認)



(参考)

水銀に関する水俣条約(英語)

CLASP:よりサステナブルな世界への移行をめざして、電化製品や機器の性能を改善し、気候変動の緩和をはかると共に、クリーンなエネルギーへのアクセスを拡大することをめざすNGO。世界がLEDへの移行をはかることを推進するキャンペーンThe Clean Lighting Coalition (CLiC)を運営している。1999年設立。本拠地米国。https://www.clasp.ngo/

クリーンライティング連合: CLASPがコーディネートする国際共同体で、水銀をに関する水俣条約を通じて、水銀を使用する照明を撲滅し、国際市場が水銀フリーでエネルギー消費の少ない、コストパフォーマンスの良いLED照明に移行することを目的としている。(英語サイト日本語サイト) 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ...