コラム
2022/07/02
スタッフの再エネシフトを支援する意義3
猛暑が続いていますが皆さん元気にお過ごしでしょうか。 電力ひっ迫に関するニュースが連日報道されていましたが、だからといって火力発電や原発に回帰するのではなく、今こそ改めて再生可能エネルギーにシフトすることは言うまでもありません。
そこで今回は、企業が再生可能エネルギーへのシフトを後押しするおすすめの取り組みをご紹介します。 それは、「社員等に再生可能エネルギーへのシフトをすすめること」です。
私は、IDEAS FOR GOODというウェブメディアのライターもしているのですが、このメディアを運営するハーチ株式会社が6月から業務委託パートナーに対し、再エネ100%の電力を使用・導入している場合、電力の一部を補助する取り組みをはじめました。 企業単位で再エネ電力を選択している会社は増えつつありますが、さらに一歩進んで社員や事業委託スタッフの再エネを支援することにはどんな意義があるでしょうか。
まずは環境負荷の低減。一般家庭のCO2排出量の約半分は電気由来。ですので、再エネ由来の電気にシフトするだけで単純にCO2をおよそ半減することができます。つまり、スタッフが再エネ電気にシフトすればするほど...CO2は大幅に削減できます。
次に、教育効果。再生可能エネルギー100%の電力を提供する会社は多数あります。再生可能エネルギーにはどんな種類があるのか、どこでどう発電しているのか、それぞれの会社が思い描く社会ビジョンやメッセージをみながら選別していくだけでも、エネルギーについて考える重要な機会になるでしょう。そのプロセスで得た視点や知識は仕事をすすめる上でも役立つはずです。
最後は、企業価値の向上。今や企業の環境や社会に配慮した取り組みは当たり前ですが、その項目の一つとして自ら再生可能エネルギーにシフトをするだけではなく、社員や業務委託スタッフにまで広げて再エネを推進していることはより付加価値のある取り組みとして社会に評価されることでしょう。
スタッフの再エネシフトは、当事者の家族や友人、その人たちが働く組織のエネルギー選択にも影響を与えるかもしれません。そう考えると、波及効果も期待できますね。
スタッフの再エネシフト支援は、大がかりな設備も、大規模な資金もいりません。2050ネットゼロに向けた次の一手としてぜひ、みなさんの組織でも導入してみてはどうでしょうか。
<参考>
パートナーの皆さま向け「再エネ100%電力補助」をスタートします
電力会社の選び方のコツはこちら(リンク)
2022/06/14
「声なくして人を呼ぶ」 その心は
梅雨の季節になりました。雨の季節は考えごとをするにはもってこい。ということで、今回は「PRせずにモノを売る」を考えたいと思います。
広報PRを生業にしている私が「PRせずにモノを売る」なんていうことをテーマにすると、自らの首を絞めるような感じがするかもしれませんが(笑)、果たしてどうなんでしょう。
こんなことを考えはじめたのは、先日、創業500年以上、350年以上にわたって皇室にお菓子を納めていた和菓子屋「川端道喜」さんの家訓、
「声なくして人を呼ぶ」
について書かれた記事を読んだことがきっかけです。つまり「宣伝はするな」ということなんだそうです。
「宣伝せずにモノを売る」。宣伝しなくてもモノが売れるんだったら苦労しないよ!、なんていう声も聞こえてきそうですが、どうすればそんなことが可能になるでしょうか。
考えをめぐらせているうちにもう一つ素敵な記事に出会いました。風で織るタオル、で知られるタオルブランド、IKEUCHI ORGANIC 代表の池内計司さんの「『ストーリーを売る』への僕の違和感」です*1。
IKEUCHI ORGANICさんはご存じの方も多いかとは思いますが、最大限の安心と最小限の環境負荷、すべての人を感じ、考えながらつくる、エコロジーを考えた精密さをコンセプトに、オーガニックコットンを使用したハイクオリティなタオル製品を販売されています。
記事の中で、池内さんは、最近のマーケティングで言われる、「モノを売るより、ストーリーを売れ」に違和感を感じる、一番大事なのは「モノをしっかりつくること」なはず。その結果がストーリーではないか、と語っています。
最近は、開発者の秘話などをドキュメンタリー仕立てで目にすることも増えました。面白くはあるものの、PR目的っぽいな、と思われるものも少なくありません。過剰なPRや「ストーリー」が商品の良さを曇らせてしまっていることもありそうです。
池内さんのメッセージを私なりに解釈すると、「PRする力を持つほどよい商品をつくっていれば、やたらPRしたり、ストーリーを無理してつくりあげずとも自ずと売れるはず」ということではないでしょうか。「よい商品をつくる努力を怠っていないか」そんな戒めも含まれていそうです。
確かに、前述の川端道喜さんは完全予約制ですが、予約待ちが出るほど人気で今なお、綿々とお商売を続けておられます。IKEUCHI ORGANICさんも同じく、コロナ前には工場見学に自費で!ファンの方が訪れ、コロナ下に開催したオンライン工場見学は、視聴者数が300名を超え、90分間の配信の中で離脱した方はほとんどいなかったそうです*2。宣伝をしなくても商品を選び続けてくれる、ブランドを愛し続けてくれる熱烈なファンがいるなんて羨ましい限りですね。
「いいモノをつくることこそが何よりのPRになる」
これは、モノを活動に言い換えるとNGOにも同じことが言えます。かつてNGOで広報をしていた時、意義ある活動を展開しているとプレスリリースを出さなくても多くの取材を受けました。それだけで忙しかったことも! PRはそれなりに労力コストがかかる仕事ですから、PRをしなくてもよければその分、NGOであれば活動に、企業であれば商品開発などに持てる資源をまわすことができます。その方がさらに活動、商品の価値をあげることができ好循環が生まれるでしょう。
ということで、冒頭の懸念に戻ると、よい商品を販売して(NGOの場合は活動をして)PRせずとも、声を出さずとも、広報の仕事はなくなりません(笑)。それどころか、取材に対応するだけでも大忙しですし、声を出さないなりにやることはたくさんあります。
次回は、「声なくして人を呼ぶ」とサステナビリティの相性について考えてみたいと思います。
梅雨自分、皆様どうぞ気をつけてお過ごしください。
*1 『ストーリーを売る』への僕の違和感
*2 IKEUCHI ORGANICが「オンライン工場見学」を実施、"ファンの気持ちを高める"原点はファンと一緒にブランドを創るという想い
2022/05/30
時にはアナログで
少しずつ暑くなってはきましたが、まだなんとか歩いて気持ちのいい季節が続いています。先日、京都の街中を歩いていたときに見つけたのがこちら(上記写真)。
なになに「エコレシピ?」。気になってみてみると、京極小学校(京都市上京区)のエコレシピチラシグループがつくったもので、食品ロスが少なくなるようなレシピを集めたのだそう。赤シソとお茶殻のおもちなんて、京都らしいなあとついつい見入ってしまいました。
学校の周辺は子どもたちはもちろんですが、学童のお迎えに来る両親も通りますし、近所の方も歩いています。PRというと、最近はつい、SNSだ、Webサイトだ、いや、オンラインセミナーだ......と何かと今風なテクニックに走りがちですが、まずは小学校の関係者や近所の人たちといった身近な人たちを対象に知ってもらう手段として考えると、「建物のフェンスにチラシを掲示する」なんていうアナログな方法も案外有効な広報手段の一つかもしれません。
この小学校は京都御所の近くにあるので、観光客が戻ってくればより多くの人に「京都らしいエコレシピ」を伝えることもできそうです。
QRコードをつけて、「つくレポ(エコレシピを実際につくってみたという写真とお知らせ)」を送ってもらい、双方向なコミュニケーションを経験してみるのも面白そうですね。おっと、またテクニックに走っているかも。
「つくってみました!」というお手紙お待ちしています、でもいいですね!
2022/05/07
いつもエシカルなものを選べない。その悩みに答えてみる。
先日、ある大学でエシカル消費についてお話をさせていただきました。その時のこと。
ある学生さんから
「中学校の頃からずっとエシカル消費に関心を持って、買い物の際はできる限りエシカルな選択をするようにしてきたが、お金がたくさんあるわけではないのでいつもエシカルなものを選ぶというわけにはいかない。この点についてどう考えたらいいか」
とコメントを求められました。わかるわかる。痛いほどわかる、その気持ち。
私もいつもオーガニックやフェアトレードといったエシカルな商品を選べているわけではありません。
「あー本当はこっちを選びたい......けれども財政的に厳しい......」と心苦しい思いをすることもしばしば。ではその限界の中で私がどう考えて、どんな選択をして、どう納得しているのか。気になって私なりに考えを整理してみました。
1.常にベターチョイスをめざす
そもそもエシカル消費には切り口がたくさんあります。オーガニックであったり、CO2の排出が少なかったり、包装材が少なかったり、生産者を大切にした製造だったり。ですので、たとえオーガニックの、値段の高い野菜が買えなくても、地場産のものを選んだり、フェアトレード認証を得ていなくても、寄付付きのチョコレートを選んだり、中古品を選んだりといった「ベターチョイス」をすることは十分可能です。
「パーフェクトは善の敵である(The Perfect is the Enermy for the Good)」とも言います。お金が十分にないからといって「もうだめだ!」と諦めることはありません。完璧でなくても「包装材の少ないものを選んだからよしとしよう!」「地元の農家さんから購入したからよしとしよう!」。少しでもよりよい社会づくりにつながる選択をしていれば「よしとする!」。これくらいの心構えで構いませんし、その方が長続きすると思います。
2.小さな金額でも大きな力
エシカルな商品をたとえ数百円でも購入すればそれは大きな力です。たとえばコンビニなどではもともと商品点数が少ないので数個売れるか売れないかでも品揃えの判断に影響するという話を聞いたこともあります。
こんな視点もあります。フェアトレード認証製品の日本人一人当たり年間購入額は104円*1。フェアトレードチョコレートを1枚(数百円程度)購入すれば軽く上回る金額です。もし多くの人が一年に1枚でもフェアトレードチョコを購入すれば......この数字は大きく変わるはず。「今年もフェアトレードチョコを1枚購入した(=日本人の平均購入額は超えた!)からよしとする!」。こんな判断も一つではないでしょうか。
ちなみにフェアトレード先進国、スイスの国民一人当たりの年間購入金額は11267円*1。ここまでいくと社会全体の変革が必要ですね。
*1 【国内海外フェアトレード市場動向】国内市場規模131.3億円とコロナ禍にも関わらず伸張
3.暮らし方を見直す
消費量が多いと高いものは選びにくくなりますが、消費量を減らせば多少高いものも選べるようになります。そうは言っても消費量はなかなか減らせない、と思っていませんか。案外そうでもないんです。
たとえばペットボトル飲料。手軽で便利な選択ですが、500mlの緑茶を140円で買ったとすると200mlあたり56円(しかもプラスチックごみが発生)。自分で緑茶を選んだ場合、有機JAS認証のついた540円/50gの緑茶を選んだとしても200mlあたり21.6円(ごみは茶葉だけ)とかなりお得です※2。もしペットボトルと同じ単価でOKとするとかなりいい茶葉を購入でき、ちょっとしたプチ贅沢を楽しめます。
この他にも服や日用雑貨、食材なども考え方、暮らし方によっては楽しく減らせて、環境負荷が減らせるものも結構あります。これもまた、全てにおいて消費量を減らすとなるとしんどいので、「こうやったらどうかな?」と創意工夫を楽しみながら実践することをおすすめします。
※2 参考:「ごみ減らし役立ちハンドブック〜容器包装編〜」 NPO法人環境市民 堀孝弘著
4.声を上げる
そうは言ってもやっぱりエシカル商品は高くて買えない!という時だってあります。そんな時には「声を上げる」のはどうでしょうか。「声を上げる」といっても、街頭に出てシュプレヒコールを上げるといったたいそうなことではありません。「フェアトレードチョコを置いてもらえませんか」「この製品をつくっている労働者の人権はちゃんと守られているのでしょうか」などリクエストや質問を、スーパーなどの小売、製造メーカーなどに届けるのです。
そんなことして何か変わるのか?と思われるかもしれませんが、企業は私たちが思うよりも案外消費者の声を気にしています。以前、オーガニックの食材を届ける会社で商品企画を担当していた時にはお客様からいただいたメッセージはほとんど全て目を通していました。いただいた声をもとに商品づくりをしたこともあります。
また、なぜ環境保全のための行動を取らないのかといった問いに対し、「消費者からの要求がないから」と答える企業も少なくありません。だからこそ「声を上げる」ことは重要なのです。
以前、スーパーに対してエシカル消費の取り組みについて質問をしたところ、学習会を開催してくれたこともありました(リンク)。エシカルな商品を販売しているスーパーやメーカーに「ぜひ続けて販売してほしい」といった励ましメッセージを送ることもあります。企業の中でがんばっている人を応援するのもいいですね!
さて、お財布が厳しい中でのエシカル消費について考えてきましたがいかがでしたでしょうか。今回は限られたお財布の中でエシカル消費を何とか実践し続ける、という視点で考えを整理しましたが、一方で、社会全体としては所得にかかわらず、多くの人がエシカルな消費を選択できるよう政策や社会の仕組みをつくっていく必要があると思います。
長くなりましたが、地球の未来を思い、エシカルな選択を頑張って継続してきた学生さんに敬意を表しつつ、今後の参考になれば幸いです。
2022/04/17
引越しもSDGs
新年度に入り、新しい生活をスタートされた方も多いかと思います。
かく言う私も、実は湘南エリアから京都へ引越しをしました。湘南ガールの修行をもっとしようと(心はいつまでもガール 笑)思っていただけに寂しい気持ちもありますが、環境活動の盛んな京都から、またさまざまな発信ができればと思っています。
さて、今回の引越しはアート引越しセンターさんにお願いをしました。営業さんにいただいたパンフレットを見ていると、冒頭でSDGs特集を発見。最近は引越屋さんもSDGsの時代なのか...時代は変わったなあとしみじみ。エコドライブやクリーンディーゼルトラックを推進していること、トラックにAEDの搭載をしていることなどさまざまな取り組みが紹介されていました。
AED搭載車はトラックに表示がある(出典:アート引越しセンター)
とはいえ、引越しはあくまで引越し。「SDGsも大切だけれども、実際の作業の効率や質が大事」なんて私にしては珍しく「実質」を重視していたのですが、SDGsの点からみても引越しの質としても「これはいい!」と実感したことが二つありました。
一つはタブレットを利用した営業によるペーパーレス化。 営業担当の方は若い方でしたが、タブレットを利用しながらとても手際よくサービスを説明。これが本当に感心するほど段取りよく、若い方でもここまでできるようにしているアートはさんはすごい!と思いました(もちろん、営業さんの腕前もありますが)。バックオフィスと確認をとりながら、その場で見積書も作成。従来であれば、「社に一度戻ってから改めてお返事します...」となりがちなところでしょう。現場で完結できればユーザーにとっても待たされることなく即決できますし営業の方にとっても楽なはず。「働き方改革」の一環としてもタブレット利用を推進している、と言う説明が実感できる出来事でした。
もう一つ、感動したのは「エコ楽ボックス」。
引越し作業の大変さの一つに(引越しはこれが5回目!)梱包があります。中でも食器は割れ物だけに気をつかいます。今回貸していただいた「エコ楽ボックス」は発泡緩衝シートで枠がつくられており、その間にポイポイとお皿を入れるだけ。 新聞やプチプチに包む手間は一切なし。とても楽でした。そして割れる心配もなし。これまでは開封後の山のような緩衝材のごみが発生し、一時的なものとはいえ、胸が痛みましたが今回はその心配もなし!ごみを片付ける手間もなく、こんなに気持ちのいいことはありません。
エコ楽ボックスはリユース品なので、開封後はアートさんが持って帰ってくださり、また、どこかで使われることになります。2008年から提供されているサービスとのことですが、これまでに削減されたごみはかなりの量になるのではないでしょうか。
引っ越す人も楽で資源の節約にもなる。一石二鳥な素晴らしい取り組みだと思いました。
(写真:実際にお皿を入れた時の様子(上)。ケースも緩衝材も折り畳むことができるようになっており、スペースを取らない(下))
SDGsの達成年度まであと8年。自社の取り組みを分析し、マテリアリティを見据えながら、具体的な取り組みにまで落とすことが重要です。今回はSDGsが現場まで浸透していることを感じられる、嬉しい経験でした。
SDGsに照らし合わせて自社の取り組みを分析できていない、取り組みまで落とせていない、取り組みを上手く、ステークホルダーに伝えられていないといった組織の方も多いのではないでしょうか。SWAVEでは169のターゲットレベルで分析を行い、取り組みの戦略と立てた上で広報プランを作成するサービスも提供しています。関心のある方はぜひお問合せください。