コラム
2022/04/07
今回はスーパー『企業のエシカル通信簿』第5回結果発表!

エシカルな選択をしたい、と思ってもどの企業、どの商品がよりエシカルなのかなかなか分からない、という方も多いのではないでしょうか。
そこで、市民自ら調べてみよう!と2016年から企業調査を行っているのが『企業のエシカル通信簿』です。人権や環境、アニマルウェルフェアなど多様な分野を専門とする38のNPO/NGOが主体となって行っており、私も環境分野の一部をお手伝いをさせていただいています。
今回は多くの人が日々利用するスーパーを対象に、シェア上位6社を調査しました。【詳しくはこちら】
<対象スーパー>
- 株式会社アークス
- イオン株式会社
- 株式会社イズミ
- 株式会社セブン&アイホールディングス
- 株式会社バローホールディングス
- 株式会社ライフコーポレーション
詳しくは調査結果(こちら)をぜひご覧いただきたいのですが感想を一言。
毎回感じるのですが、調べて初めて分かることがあります。
例えば今回、「水」分野の調査を行ったのですが、残念ながら問題の分析や解決のための取り組みなど、主だった動きは見られませんでした。水分野は比較的長らく取り組まれてきた課題ではないか、と思っていたので意外でした。水はTNFD(自然関連財務タスクフォース)の対象にもなっており、欧米企業がこぞって着手している分野でもあります。水に恵まれていると思われがちな日本の感覚が影響をしているのかもしれませんが、水リスクは年々高まっており、危機感を持って取り組んでいただければ、と思いました。
もちろん、嬉しい発見もあります。もう一つ担当した調査分野「気候変動」分野では、昨今の流れもあり、気候変動緩和のために2050年までにネットゼロを目指すスーパーは6社中4社ありました。当然といえば当然ですが、これまでには見られなかった動きではないかと思います。2030 年の段階で40%以上(バロー)、50%以上の削減をはかるスーパー(セブン&アイ)もありました。
「エシカル通信簿」は、単に企業を評価するだけではなく、通信簿を市民からの「ラブレター」として企業に市民が何を求めているのかを伝え、企業とのコミュニケーションをはかっていこうとしています。企業との対話を通じて、持続可能な社会を構築していくための行動を加速していければ、と改めて思いました。
2022/03/29
きっかけは割れ目

チョコレート好きな私にとって、疲れた時に口にするチョコレートは格別です。今回は私の大好きなチョコレートから広報TIPをご紹介します。
今回ご紹介するチョコレートは、オランダで大人気のチョコレートブランド、「トニーズ・チョコロンリー」です。
「あれ、でもなんだかいびつな割れ目。これじゃあ、均等に分けて食べられないじゃない!」と思ったあなた。
まさに、そこにトニーズが伝えたいことがありました。
世界のカカオ生産の約6割を占める西アフリカでは約156万人もの子どもたちが働いています。その結果、教育を受けられず、貧困の連鎖が生まれ続けているのです。しかし、一方で先進国の一部のチョコレートメーカーは低価格でチョコレートの原料となるカカオを買い続け、大きな利益を得ている。その先には安価な価格でチョコレートを楽しむ消費者が......
これこそ「いびつ」な世界じゃないのか! トニーズチョコからはそんな声が聞こえてきそうです。
トニーズチョコは、西アフリカの児童労働に問題意識を持ったオランダのジャーナリスト、ジャーナリスト トゥーン・ファン・デコーケンさんにより2005年に設立されました。チョコレート業界にはびこる奴隷制を終わらせることをミッションに、自らが使う素材はもちろん、カカオ、砂糖共にフェアトレード認証をを得たものを使用しています。
サステナビリティに関する話題は背景が複雑なことが多く、なかなか簡単に理解できることばかりではありません。それだけに、ついつい説明が億劫になったりしてしまうことも多いのではないでしょうか。しかし、消費者やステークホルダーとサステナビリティについてまずは話すこと、これは全ての始まりであり、とても大切です。
そこでおすすめしたいのが今回ご紹介したようなわかりやすい「コミュニケーションポイントをつくること」。人がふと気づくようなフックを意図的につくることによって、話を切り出しやすくしたり、見た方が気づきやすくすることが目的です。
もう一つ、コミュニケーションポイントの事例をご紹介します。
以前にご紹介した木造賃貸マンション(こちら)の玄関に設置された木製の棚。地元産木材で作られており、住んでいる方が地元産木材を意識したり、また、遊びに来られた方に「うちのマンションは地元産木材でつくられているんだよ」と話すきっかけにしてもらうために設置されていました。
確かに、部屋はごく一般的なワンルームマンションなのでこれがなければ、地元産木材で作られたマンションであることは忘れられてしまいそうですし、何もない中で、部屋に来た方に「このマンションはね...」と話すのもなかなか難しそうです。その意味ではとてもいい「コミュニケーションポイント」だと思いました。
児童労働も気候変動も生物多様性も、全ての社会問題はまず「知ること」から始まります。その「知る」きっかけとして、コミュニケーションポイントはとても重要です。コミュニケーションポイントを通してどんな情報を届けるか、どんな会話が生まれるか、考えてみるとワクワクしますね!
トニーズ・チョコロンリーについて詳しくはトニーズ・チョコ・ロンリー
おまけ、もう一つコミュニケーションポイントの事例をどうぞ(ステッカー)
2022/03/15
SNS発信とメディア掲載

今日は久しぶりに広報のコツのお話です。
メディアに取り上げて欲しい! 広報に携わっている人であれば誰もが思う願いですが、プレスリリースを出してもなかなか取り上げられないことも多いのではないでしょうか。もちろんコツを押さえたプレスリリースを作成し、戦略的に発信することは重要ですが、実は日頃のアクション、「SNSの発信」も重要です。
理由は二つ。
まず一つ目は、最近は自分でアカウントを持ち、ネタ探しをしている記者やメディア担当者が増えています。実際、私も、私個人、もしくは関わっている組織のSNSを見て、問い合わせをいただいたことが何度かあります。プレスリリースを出してもいないのに問い合わせをいただいてさらに記事や番組として取り上げていただけるというのはとてもありがたいお話です。メディア受けを狙う投稿を出す必要はありませんが、リーチしたいメディアの方が見ているかもしれない!と思って取り組むことをおすすめします。
もう一つは、日頃のSNSの発信が信頼につながる、という理由です。
メディアの方が日頃からSNSの発信を見ていてくださった場合、そこにある日、プレスリリースが届く。「あ、SNSで見たことのある◯○からのプレスリリースだ」。日頃からSNSで発信をしていれば、単なるプレスリリースではなく、よく知った組織のプレス、として受け止めてもらえます。SNSでの印象がよかったり、信頼度を上げるものであったりすればなおさらでしょう。
実際、取材の際に「いつもXXについて発信されていますよね」といったコメントをいただき、信頼してもらっていることを感じたことがあります。
一発ホームランも日頃の練習から。SNSの発信は地味に手間がかかるものではありますが、大々的なメディアカバレッジにつながる道と信じてぜひがんばってください!
2022/02/27
「ママ、男の子は強いんだよ」の背景にあるもの

「ママ、男の子は強いんだよ」。
これは、5歳の娘が最近ふと口にした言葉。聞けば女の子は弱いんだそうな。5歳でもうそんなステレオタイプになっちゃうなんて! 我が家は私の方が強いはずなんですが(笑)どうやら幼稚園で先生が、「女の子は弱いんだからいじめちゃだめ」といった趣旨のことを伝えている模様。いや、そもそも強くてもいじめちゃだめだし、「男の子は強くて女の子は弱い」なんて、男の子にとっても(強いと言われると弱みを表現しづらくなる)女の子にとっても(弱い存在であることが当然と思ってしまう)、将来にわたって感情や行動を束縛する呪文になってしまうのに。
これは参った、と思っていたところ、OECDの調査によると、男性女性像は5歳くらいまでにできあがってしまうのだそうです。つまり、うちの子は世界的な傾向にばっちり当てはまっている、ということが判明したのでした。
要因の一つとして私が気になったのが、この年頃の子どもたちが接するメディア「絵本」で描かれるジェンダーの偏りです。登場するのはお父さんよりもお母さんが多く、そのお母さんもエプロンつけて料理など家事をしている様子が描かれていることが少なくありません。エプロンをつけているの女性がダメ、というわけでは決してありませんがバランスが大事だと思います。家事や子育てをしているお父さんが描かれたストーリーもあるべきだし、さらに言えば、お父さんもお母さんも男性、もしくは女性であったり、多様な家族構成のファミリーが描かれていれば、子どもたちのジェンダーイメージはもっと自由になるのではないでしょうか。
生まれて5年で「男の子は強くて女の子は弱い」というイメージが定着してしまえば、果ては、世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表する「ジェンダーギャップ指数2021」で120位代の常連、日本に直結するといっても過言ではないでしょう。SDGs目標5(ジェンダー平等を実現しよう)の達成もほど遠いものになってしまいます。
ジェンダー問題は解決策が見えづらいことから、SDGsの認識調査でも上位になかなかランクインしない項目ですが、発信する情報の工夫は比較的簡単で、ジェンダー問題の解決につながる大きな力になるのではないでしょうか。その意味では、商業写真を提供しているゲッティイメージズ ジャパンが、写真を通してジェンダーギャップを解消しようとしている取り組みにはなるほど!と思わされるものがありました(こちら)。
メディアが私たちのジェンダー認識の形成に与える影響は大きいもの。広報をしていく際にもしっかりと心がけていきたいものです。
*冒頭の写真は最近娘が描いた絵。左端が私、夫、娘。描かれた大きさにどきっ...笑。
2022/02/04
正直が一番!「青のり」に学ぶコミュニケーションの基本

【サスコミュラボ no.1 「正直が一番」】
すじ青のりが帰ってきました!
何の話かと言いますと、お好み焼きや焼きそばにかける「青のり」の話です。
1971年から『青のり』を販売してきた三島食品は2020年7月、原材料の変更を理由に、パッケージを青色から黄緑に、商品名を『青のり』から『あおのり』に変更しました。(詳しくはこちら/筆者執筆)
気候変動による海水温の上昇などを理由に原材料となるスジアオノリが激減。生産量のピークだった2015年と比較すると10分の1にまで減り、価格も高級肉並になってしまいました。
そこで、他の種類のノリでしばらく対応することに。その際、単に原材料名の表示を変えるだけではなく、パッケージの色まで変更し、名称表記もひらがなの「あおのり」に変えたのでした。見た目と香りが良いスジアオノリへのこだわりと消費者に確実に伝えたいという正直な思いから出た行動でした。
(右が変更前、左が変更後。三島食品ウェブサイトより)
この真摯な対応がSNS上で話題に。三島食品の「必ず帰ってきますから」という熱いメッセージの応えるかのように「待ってます!」というメッセージがあふれました。
それから約1年半。約束通り、養殖と天然ものを組み合わせたスジアオノリ100%で帰ってきた、というわけです。
ここから学ぶことは何でしょうか。私はやはり「正直が一番!」に尽きると思います。ちょうどこの記事を書いている2022年2月はじめ、アサリの産地偽装が話題になっています。報道をみているとかかわっている方々はどうやら承知の上で産地偽装をしていた模様。見た目だけで産地は分からないから大丈夫だろう、と思ってしまったのでしょう。産地偽装は食品表示法違反です。しかし、問題はそれだけにとどまりません。商品そのもの、商品を販売している店、つくっている会社への信頼失墜につながります。
今後、昨今の気候変動や環境変化によって原材料の変更を余儀なくされることも増えるでしょう。本来の質が保てない時もあるかもしれません。でも、そんな時は邪なことは考えず、正直に事実を伝えることが一番です。
今回の「青のり」のように、産地変更を積極的に伝えるコミュニケーションをとれば、ますますファンが増え、原材料変更という災難もブランド価値を高めるプラスの機会として活用することができます。
ということで今日のサスコミュラボのポイントは「正直が一番!」でした。
*サスコミュラボとは:サステナビリティを高めるためのコミュニケーションを調査研究するラボ