コラム
2024/06/06
グリーンウォッシュにどう対応すべきか
先日、「グローバルネット」2024年1月号に、「諸外国のグリーンウォッシュ規制と日本の規制」と題して記事を書かせていただきました(NPO法人環境市民 副代表理事 下村委津子さんと共筆)。
「グリーンウォッシュ」とはあたかも環境に配慮しているかのように見せかける表示のことで、日本でも最近随分と話題になってきました。私は、NPO法人環境市民でスタッフをしていた際、2011年から2013年にこの問題に取り組み、欧米各国で調査を行いました。その時、欧米では国や民間で規制やガイドラインを制定しており、すでに10年ぐらいたっている状態でした。
それから10年が過ぎましたが、日本は残念ながら国も民間も10年前と状況はさほど変わらず、効果的な対策を打ち出せているとは言えません。
世界動向、日本が今後とるべき方向性についてもご紹介しましたのでぜひご一読いただき、みなさんのご意見をおきかせください。
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2024/04/21
「もう服はつくらないで」にどう応えるか
映画「燃えるドレスを紡いで」を観てきました。
パリ・オートクチュール・コレクションの公式ゲストデザイナー、中里唯馬(なかざと ゆいま)さんを通して「服の最終到達点」と「未来」が描かれるドキュメンタリー映画です。
中里さんが訪れたアフリカ、ケニア。そこには毎日毎日、私たちが手放した服が数十キロ単位の固まりで届けられていました。中古市場で販売されるものの、仕立て直しの段階で不要になった歯切れやそこでも不要になった服が地面に捨てられ、まるで服の床のようになっていました。川沿いも、捨てられた服で土肌が隠れ「服の土手」と言っても過言ではない状態。スクリーンに広がる映像に言葉を失いました。
産業廃棄由来なのか、個人が「リユース」という名のもとに手放したものなのか、経路まではわかりませんが、映画の中で中里さんが見る限り、どれも安いポリエステルや複合素材のものばかり。「次の人に着て欲しい」と思って大事に手放されたというよりは「もう着ないから捨てよう」と放り出された感が強いように感じました。
「世界でつくられる服の75%は廃棄されている」
日本でも着られなくなった服の約7割がごみになっています。残り3割は中古市場に流れたりリユースされたりしていますが*1、一部は輸出され、2015年には24万トン輸出されています*2。輸出先の国でさらに不要になったものがまるで掃き溜めのようにアフリカなど途上国を中心に輸出され、現地の産業を圧迫し、火災により有毒ガスが発生するなどの問題を引き起こしています*2。
「もう服はつくらないで欲しい」。
映画に登場する現地の方が語る言葉です。
この問いにどう応えるのか。リユースは大事ですが、リユースの限界も露呈している今、個人で、地域で、そしてファッション業界全体でこの問題について考え、それぞれにアクションを起こす時ではないでしょうか。
公式サイト「燃えるドレスを紡いで」
*1 https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/
*2 https://www3.nhk.or.jp/news/special/international_news_navi/articles/feature/2022/05/29/21711.html
2024/03/03
重箱の隅? サステナビリティ浸透度のバロメーター
ブランディングは決してブランドカラーやロゴを決めたりすることではない。どこを切っても、そのブランドが現れること。
ブランディングを専門とする方からよく聞く言葉ですが、最近つくづくそうだなあと思います。
先日、朝に銀座を歩いていた時のこと。とあるブランド店の前を通ると...清掃をしている方の制服に目が止まりました。よく見かける、水色や青といった清掃員の方の制服とはかけ離れたデザイン。こんなところまで統一するのか、と驚かされました(写真)。
サステナビリティ分野はどうでしょうか。
各社、高らかにさまざまな目標を掲げていますが、いざ打ち合わせに行くと、使い捨てのプラスチック容器で飲み物が出てきたり(飲み物をいただけることは自体はありがたいのですが...)、夏はキンキンに、冬は暑いほど冷暖房が効いていたり、お昼になると社員が続々とランチをレジ袋に入れて戻ってきたり、多様性を理解しているとは言い難い言動があったり...違和感を感じることもしばしば。
あるセミナーで、大手のブランディングを多く手掛けている方が「イベントでペットボトル飲料がずらりと並んでいたりするとその会社のブランドはそんなもんなんだな、と思う」とおっしゃっていました。
重箱の隅のようにも思えるかもしれませんが、こうした「こまごまとしたこと」はその組織のサステナビリティがどこまで浸透しているかの証左だと思います。厳しいようですが十分に浸透していなければ、社員の行動もそれなりに、なるでしょう。社員一人ひとりに浸透してこそ、その上に積み上がる、組織の戦略や目標が形になるもの。十分に浸透していなければ、その上にいかに立派な目標が掲げられても、実現は困難に直面するでしょう。その意味では、「こまごましたこと」を重箱の隅とは言っていられなさそうです(かといって都度、目くじらをたてて注意するものではありませんが)。
サステナビリティも「かくあるべし」。ブランドものの制服に身を包み、掃除をする方の背中を見ながら感慨深く思った朝でした。
2024/02/18
ケージフリー卵生産の拡大を願って
ケージフリー卵生産の推進を支援するグローバルフードパートナーズ(Global Food Partners)の広報支援を行いました。
グローバルフードパートナーズはシンガポールに拠点を置くコンサルティング会社です。 ケージフリー卵生産のベストプラクティスに向けた持続可能かつ経済的に実行可能な移行を実現するために食品企業や農家、業界ステークホルダーを支援し専門的知識・技能を提供しています。特に中国やインドネシア、日本、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイを拠点に事業を行っています。
今回、日本での展開のため、オンラインセミナーを開催することになり、そのための広報支援を行いました。SNSも開設したばかりで会社の認知度もこれから、どいう段階でしたので、登壇者からメッセージをいただき配信機会を創出 (サイトはこちら)。事前に内容を理解し、より関心を持った方々に参加いただきました。その他、メディアへの個別アプローチやメディア資料の作成支援などを行いました。
日本の一人あたりの卵消費量は多く、国際鶏卵委員会(IEC)の調査(2021年)によると337個と、メキシコの409個についで世界で2位を記録するなど常に上位にランクインしています(詳細)。しかし、日本の採卵養鶏の99%は「バタリーケージ」と呼ばれる、A4サイズほどの広さの金網でつくられたかごの中での飼育されている推定されています。1日に1万回以上も土をつつく鶏の性質が確保される状況には程遠いのが現状です。ストレスを抱えた鶏は仲間をつつくため、嘴を切る処置まで行うなどさらなる悪循環を生み出し、アニマルウェルフェアの観点からみると深刻な問題を抱えています。
一方、世界はバタリーケージを利用した養鶏を禁止した「ケージフリー」生産を加速させています。EUは2012年にバタリーケージを禁止。米国ではカリフォルニア州やミシガン州、オハイオ州など州レベルでの禁止が進んでいます。ヒルトンやマリオットなどの観光業をはじめ、企業レベルでもケージフリー卵への移行が進んでいます。スターバックスやマクドナルドなども米国を中心に100%移行していますが、日本を含むアジア地域では、供給不足や消費者の関心度の低さが移行を阻む要因となっています。
今回のセミナーでは、アジア各国が積極的にケージフリー生産への移行に動き出していること、また、生産者は需要があれば、移行に前向きであることもわかりました。重要になってくるのは、養鶏家への技術的な支援です。その点、豊富な知見を持つグローバルフードパートナーズが支援していくことによって、今後、アジア、そして日本が、ケージフリー生産をリードしていくことを期待しています。
今回はその足がかりとなるセミナーの広報支援を行うことができ、とても光栄でした。
グローバルフードパートナーズでは生産者向けのオンライン講座も行っています。政府や企業の政策立案者の方がケージフリー生産の理解をすすめるためにもおすすめです。ぜひ関心のある方はご利用ください(こちら)
2024/01/13
「反対し続けてくれている」その心は
昨年末、「花餅」づくりのワークショップに参加してきました。
ワークショップを企画してくださった農家さんのお話によると、その昔、お正月の時期に、お花の代わりにとつくられはじめたのがはじまりとか。考えてみれば冬は花がほとんどないのが当たり前。今ではいつでもどこでもお花が手に入りますが栽培の際には加温をするなど、環境に負荷がかかっているのかもしれません。
まずは用意してくださった梅の木選び。枝ぶりを見ながらできあがりを妄想するのは楽しいものです。次はお餅をつける作業。つきたてのお餅をつまみ食いしながらの作業の楽しいこと! 手も口も(笑)動かしながら制作にはげみました。赤いお餅は、人口着色料ではなく、黒米を使用。落ち着きある淡い紫がおしゃれです。あるモノを利用して「華やかさ」を表現しようとした昔の人のクリエイティビティーは今に勝るとも劣らないものがありますね!
さて、主催してくださったのは、作り手さんとの対話を大切にしながら、持続可能性を大切にした乾物やお野菜、雑貨などを販売している「すみれや」さん。こだわりの商品が盛りだくさんでついお財布の紐が緩んじゃいます。 特に立ち止まったのがこちら。
「祝島の人たちは、対岸に予定されている上関原発建設に35年以上前から反対し続けてくれています」
説明にあるように、このひじきは対岸で原発の建設が計画されている、山口県の祝島という場所でつくられています。
「反対運動といってもその人たちの問題だから当然しょ?」と思うかもしれません。でも本当にそう言い切れるでしょうか。
原発事故が一度起きれば、その地域の人たちだけの問題では終わらないことは東京電力福島第一原子力発電所の事故で明白です。核物質の性質を考えれば原発はどこにもあるべきものではありません。 反対運動は、気持ちも体力も消耗します。それを数十年も続けるというのは相当なものです。かといって建設予定地から離れている私たちが運動に参加したりするのは難しいもの。そう考えると「反対し続けてくれている」という表現は的を得た表現だなあと思いました。
作り手への深い理解、そこから生まれる尊敬や感謝の念が垣間見られる表現。私もこういう感性を持ってコミュニケーションをしていきたいな、と思わされました。ちなみに、このひじきはほんとに味わい深くて、軽く茹でて、さいの目に切ったお豆腐と一緒に、ポン酢とごま油でさっと和えるだけで絶品です。我が家では一瞬にしてなくなる人気レシピ。ぜひお試しを。
すみれや ウェブサイトはこちら