コラム

2022/09/01

レスorゼロ包装に慣れてもらうには...

包装材ゼロに慣れてもらうには...

先日、NPO法人わかもの国際支援協会(通称:Wisa(ウィーサ))で「エシカルってなあぁに?」と題して講演をさせていただきました(環境市民コーディネーター、消費生活アドバイザーとして)。

Wisaは日本・ラオス・バングラデシュ・ポーランドの4か国で、起業家精神(アントレプレナーシップ)教育を提供する国際的な若者支援を行っています。今回は普段の何気ない買い物ー消費行動から途上国とのつながりを理解するため、エシカル消費についての基本を学ぼうということで企画してくださいました。


「エシカルな商品は価格が高いことも多い。多くの人が手に取れるようにするには...」など考えさせられる問題提起もありました。

ある高校生からはメールでこんな質問をいただきました。

 野菜などの包装紙を減らすではなく無くすとたくさんの人が抵抗すると思うのですが、
 (包装紙がないから汚いやここのスーパーで買うのはやめよ。というように)少しでも早くその環境に日本人を慣らさせるためには
 どうすればいいと思いますか?
 包装紙を無くしてもお客さんにいつも通り来てもらうためにはどうすればいいと思いますか?


みなさんだったらどんなふうに答えますか? 包装を少しでも少なくしたい、いっそ無くしたい!そんな熱い思いが伝わってくる問いがいいですよね。嬉しくなる問いかけに私になりに答えてみました。


   ●     
●     ●     ●     ●     ●  
  

日本人は特に「包む」行為が好きなところがあるので、包装の削減は難しいように思えますよね。包装材の少ない欧米米のスーパーに見慣れて日本に帰ってくると、日本はなんて(プラ)包装が多いんだ!と思います。一足飛びに「なくす」のは難しいかもしれませんが、減らせるところは減らし、なくせるところをなくすことは段階的には可能だと思います。

ポイントは3点あるかなあと思います。

 

1 デザインの力

包装材をなくしていく上でデザインの力によって、消費者が違和感を感じずに包装を減らせる、なくせる例は結構あるのではないかと思います。たとえば、京都駅のお土産をみていると外側の包み紙が昔と比べて随分減ったように思います。先日京都駅で買ったお土産やこんなかんじ→(リンク)で箱がとてもかわいらしく、外包はありませんでした。ただ、中は個包装の場合もあるのでまだまだ課題はあります。

プラスチック素材を紙に変える例も増えてきましたね。これは無印の例(リンク)。靴下などのフックを紙製品に変えています。個人的にはこれもなくせるのではないか...と思ってしまいます。このあたりはポイントの3「慣れ」に関わってきますね。

どんなデザインだったら抵抗感、違和感なく包装材が減らせるか、みんなで考えてみるのも面白そうですね!

 

2 政策

二つ目は政策です。国、自治体、企業でそれぞれ、包装材を削減する政策を打ち出すことが大切だと思います。それによって、1のようなデザインも生まれるでしょうし、量り売りといった売り方も増え、多くの人が、プラ包装の少ない商品サービスを手にすることができるのではないでしょうか。

講演でご紹介したように、国際レベル、国でも政策が出されつつありますが、まだまだ不十分だと思います。今はまだ一部の意識の高いお店や企業が取り組んでいる状態なので、今後、もっと「当たり前」にしていくための政策を各所から出してほしいと思いますし、消費者のアクションはそれを後押しする力になると思っています。

IMG_1042.JPG

京都のある商店街に琺瑯のタッパーを持ってお惣菜を買いにいってみました。もともと量り売りなので、すんなり入れてくれました。特段仕組みがなくても「やってみることも大事」。消費者一人ひとりの行動が、売り手へのシグナルになります。


3 慣れ

三番目は「慣れ」です。今では当たり前のごみの分別も導入当時は「めんどくさい」だの「分かりにくい」だのネガティブな意見がいろいろありました。ところが導入してしばらくすると、こんどは分別ごみ箱がないと「なぜごみ箱が一つなんだ!」というクレームがある、とホテルの方からうかがいました。今聞くと笑い話ですが案外、慣れてしまえばそっちの方がよくなる、というのはよくあることだと思います。

講演でもお話したように欧米では野菜を含め、ほんとうに包装材が少ないです。だからといって、何か問題が生じるかというと特段ありません。私もしばらくシドニーでご紹介したようなスーパーで買い物をしていましたが、ごみが出ないので快適そのものでした。

IMG_2820のコピー.JPG
シドニーにいた時のある日の買い物。量り売りだからこそライム1個、唐辛子1本なんていう買い方ができました。この日の晩御飯はフォー。美味しかったですよ♪

 

レジ袋の有料化もそうですね。有料化の際は「消費者からクレームが出るのではないか」と神経質になっているスーパーがたくさんありましたが今や有料が当たり前。今では逆に無料で袋に入れてくれるところがあると、えっ?と思ったりしませんか。

 

おそらく、他にも方策はたくさんアイデアがあると思います。高校生だからこそできることもたくさんありそうです。包装材が多い企業いろいろ意見メールをみんなで出してみて反応をSNSで公開する、とか、文化祭でノン&レスプラスチックをテーマにデザインコンテストするとかとかとか。

  

ぜひ何かアクションしたらまたシェアしてくださいね!

 

 

TOP写真はカナダの普通のスーパー。葉物もそのまま売られている。

 

 

2022/08/09

大阪・関西万博 「持続可能性に配慮した調達コード」公開されました

大阪・関西万博 「持続可能な調達ワーキンググループ」メンバーになりました

2025年、大阪の夢洲(ゆめしま)で開催される大阪・関西万博。
開催にあたって調達される、さまざまな物品の持続可能性を高める上で重要になるのが調達コードです。

私は今回、2022年7月から、日本消費生活アドバイザー・コンサル タント・相談員協会(NACS) 食生活委員会 委員として、この調達コードを検討する「持続可能な調達ワーキンググループ」メンバーになり、パーム油、水産物、農産物に関する議論に参加しました。

そして、2023年7月に、調達コードが完成し、公開されました。(こちら

万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。残念ながら、現世代、将来世代、さらには多くの生き物が「輝ける」コードになったとは胸を張って言い難いものがありますが、これが日本の「現在地」であり、ここから進展させられるかどうかは、私たち一人ひとりの努力にかかっているのだと痛感しました。

まずは、このような貴重な機会をくださったNACSの皆様に深く感謝しつつ、もし次回、日本として調達コードを示す機会に恵まれた際には、もっとよい結果が生み出せるよう、日々の努力を続けていきたいと思います。

 

  • 日本消費生活アドバイザー・コンサル タント・相談員協会 についてはこちら

 

2022/07/23

お祭りに見る 元祖リユース

お祭りに見る 元祖リユース

夏祭りの季節になりました。皆さんの地域でもさまざまな夏祭りが行われているのではないでしょうか。 京都の夏のお祭りといえば祇園祭。千年以上の歴史を誇る日本三大祭の一つで、疫病退散を祈願するお祭りでもあります。

今年は特に三年ぶりの巡行とあってまちの人の熱気も例年に増して熱く感じられました。祇園祭は歴史があるだけに何度みても、毎回新たな発見や感動があり、興味は尽きません。今回関心を持ったのは「縄がらみ」と呼ばれる、釘を使わず、部材を縄で固定して組み立てる工法。理由としては、釘で留めてしまうと、車輪などの動きに幅がなくなり、動かしにくく、木材が割れてしまったりするため、と言われています。縄の結び方マニュアル、なんていうものはなく、伝承で受け継がれてきた、というのも驚きです。結び目も、それぞれの山や鉾で「海老結び」「鶴・亀結び」などのこだわりがあるそうです。見た目の意匠性にも見入ってしまいますね。

PXL_20220717_033633893.jpg

飾り付けがされると中は見えにくいのですが、縄でしっかりと固定されています。大きなものは10トンを超えるとか。そう考えると縄の固定だけというのは驚きです。

 

お祭りが終わると結び目を解いて、木材を分解。木材は保管され、また次の年に使われます。そう考えると元祖リユースともいえそうです。特に、祇園祭の場合、釘を使わず、縄で固定しているだけなので、コンパクトに片付けることができ、長く使えるのではないないか、と推察しました。

祇園祭に限らず、地域の伝統的なお祭りには何かしらモノを大切に使ったり、自然とのつながりを大切にするような、つまり、サステナビリティを大切にするヒントが多くあるように思います。温故知新。お祭りを楽しみつつ、古の人々の知恵に学ぶ機会にしていきたいものですね。

2022/07/02

スタッフの再エネシフトを支援する意義3

スタッフの再エネシフトを支援する意義3

猛暑が続いていますが皆さん元気にお過ごしでしょうか。 電力ひっ迫に関するニュースが連日報道されていましたが、だからといって火力発電や原発に回帰するのではなく、今こそ改めて再生可能エネルギーにシフトすることは言うまでもありません。 

そこで今回は、企業が再生可能エネルギーへのシフトを後押しするおすすめの取り組みをご紹介します。 それは、「社員等に再生可能エネルギーへのシフトをすすめること」です。

私は、IDEAS FOR GOODというウェブメディアのライターもしているのですが、このメディアを運営するハーチ株式会社が6月から業務委託パートナーに対し、再エネ100%の電力を使用・導入している場合、電力の一部を補助する取り組みをはじめました。 企業単位で再エネ電力を選択している会社は増えつつありますが、さらに一歩進んで社員や事業委託スタッフの再エネを支援することにはどんな意義があるでしょうか。

まずは環境負荷の低減。一般家庭のCO2排出量の約半分は電気由来。ですので、再エネ由来の電気にシフトするだけで単純にCO2をおよそ半減することができます。つまり、スタッフが再エネ電気にシフトすればするほど...CO2は大幅に削減できます。

次に、教育効果。再生可能エネルギー100%の電力を提供する会社は多数あります。再生可能エネルギーにはどんな種類があるのか、どこでどう発電しているのか、それぞれの会社が思い描く社会ビジョンやメッセージをみながら選別していくだけでも、エネルギーについて考える重要な機会になるでしょう。そのプロセスで得た視点や知識は仕事をすすめる上でも役立つはずです。

最後は、企業価値の向上。今や企業の環境や社会に配慮した取り組みは当たり前ですが、その項目の一つとして自ら再生可能エネルギーにシフトをするだけではなく、社員や業務委託スタッフにまで広げて再エネを推進していることはより付加価値のある取り組みとして社会に評価されることでしょう。

スタッフの再エネシフトは、当事者の家族や友人、その人たちが働く組織のエネルギー選択にも影響を与えるかもしれません。そう考えると、波及効果も期待できますね。

スタッフの再エネシフト支援は、大がかりな設備も、大規模な資金もいりません。2050ネットゼロに向けた次の一手としてぜひ、みなさんの組織でも導入してみてはどうでしょうか。



<参考>
パートナーの皆さま向け「再エネ100%電力補助」をスタートします

電力会社の選び方のコツはこちら(リンク

 

2022/06/14

「声なくして人を呼ぶ」 その心は

「声なくして人を呼ぶ」 その心は

梅雨の季節になりました。雨の季節は考えごとをするにはもってこい。ということで、今回は「PRせずにモノを売る」を考えたいと思います。


広報PRを生業にしている私が「PRせずにモノを売る」なんていうことをテーマにすると、自らの首を絞めるような感じがするかもしれませんが(笑)、果たしてどうなんでしょう。

 

こんなことを考えはじめたのは、先日、創業500年以上、350年以上にわたって皇室にお菓子を納めていた和菓子屋「川端道喜」さんの家訓、


「声なくして人を呼ぶ」

について書かれた記事を読んだことがきっかけです。つまり「宣伝はするな」ということなんだそうです。
 

「宣伝せずにモノを売る」。宣伝しなくてもモノが売れるんだったら苦労しないよ!、なんていう声も聞こえてきそうですが、どうすればそんなことが可能になるでしょうか。

考えをめぐらせているうちにもう一つ素敵な記事に出会いました。風で織るタオル、で知られるタオルブランド、IKEUCHI ORGANIC 代表の池内計司さんの「『ストーリーを売る』への僕の違和感」です*1。

IKEUCHI ORGANICさんはご存じの方も多いかとは思いますが、最大限の安心と最小限の環境負荷、すべての人を感じ、考えながらつくる、エコロジーを考えた精密さをコンセプトに、オーガニックコットンを使用したハイクオリティなタオル製品を販売されています。

記事の中で、池内さんは、最近のマーケティングで言われる、「モノを売るより、ストーリーを売れ」に違和感を感じる、一番大事なのは「モノをしっかりつくること」なはず。その結果がストーリーではないか、と語っています。

最近は、開発者の秘話などをドキュメンタリー仕立てで目にすることも増えました。面白くはあるものの、PR目的っぽいな、と思われるものも少なくありません。過剰なPRや「ストーリー」が商品の良さを曇らせてしまっていることもありそうです。
 

池内さんのメッセージを私なりに解釈すると、「PRする力を持つほどよい商品をつくっていれば、やたらPRしたり、ストーリーを無理してつくりあげずとも自ずと売れるはず」ということではないでしょうか。「よい商品をつくる努力を怠っていないか」そんな戒めも含まれていそうです。


確かに、前述の川端道喜さんは完全予約制ですが、予約待ちが出るほど人気で今なお、綿々とお商売を続けておられます。
IKEUCHI ORGANICさんも同じく、コロナ前には工場見学に自費で!ファンの方が訪れ、コロナ下に開催したオンライン工場見学は、視聴者数が300名を超え、90分間の配信の中で離脱した方はほとんどいなかったそうです*2。宣伝をしなくても商品を選び続けてくれる、ブランドを愛し続けてくれる熱烈なファンがいるなんて羨ましい限りですね。

「いいモノをつくることこそが何よりのPRになる」

これは、モノを活動に言い換えるとNGOにも同じことが言えます。かつてNGOで広報をしていた時、意義ある活動を展開しているとプレスリリースを出さなくても多くの取材を受けました。それだけで忙しかったことも! PRはそれなりに労力コストがかかる仕事ですから、PRをしなくてもよければその分、NGOであれば活動に、企業であれば商品開発などに持てる資源をまわすことができます。その方がさらに活動、商品の価値をあげることができ好循環が生まれるでしょう。


ということで、冒頭の懸念に戻ると、よい商品を販売して(NGOの場合は活動をして)PRせずとも、声を出さずとも、広報の仕事はなくなりません(笑)。それどころか、取材に対応するだけでも大忙しですし、声を出さないなりにやることはたくさんあります。

次回は、「声なくして人を呼ぶ」とサステナビリティの相性について考えてみたいと思います。

梅雨自分、皆様どうぞ気をつけてお過ごしください。

 

*1 『ストーリーを売る』への僕の違和感
*2 
IKEUCHI ORGANICが「オンライン工場見学」を実施、"ファンの気持ちを高める"原点はファンと一緒にブランドを創るという想い

 

 

 

 

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 ...