コラム

2022/05/30

時にはアナログで

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少しずつ暑くなってはきましたが、まだなんとか歩いて気持ちのいい季節が続いています。先日、京都の街中を歩いていたときに見つけたのがこちら(上記写真)。

なになに「エコレシピ?」。気になってみてみると、京極小学校(京都市上京区)のエコレシピチラシグループがつくったもので、食品ロスが少なくなるようなレシピを集めたのだそう。赤シソとお茶殻のおもちなんて、京都らしいなあとついつい見入ってしまいました。

学校の周辺は子どもたちはもちろんですが、学童のお迎えに来る両親も通りますし、近所の方も歩いています。PRというと、最近はつい、SNSだ、Webサイトだ、いや、オンラインセミナーだ......と何かと今風なテクニックに走りがちですが、まずは小学校の関係者や近所の人たちといった身近な人たちを対象に知ってもらう手段として考えると、「建物のフェンスにチラシを掲示する」なんていうアナログな方法も案外有効な広報手段の一つかもしれません。

この小学校は京都御所の近くにあるので、観光客が戻ってくればより多くの人に「京都らしいエコレシピ」を伝えることもできそうです。

QRコードをつけて、「つくレポ(エコレシピを実際につくってみたという写真とお知らせ)」を送ってもらい、双方向なコミュニケーションを経験してみるのも面白そうですね。おっと、またテクニックに走っているかも。

「つくってみました!」というお手紙お待ちしています、でもいいですね!

2022/05/07

いつもエシカルなものを選べない。その悩みに答えてみる。

いつもエシカルなものを選べない。その悩みに答えてみる。

先日、ある大学でエシカル消費についてお話をさせていただきました。その時のこと。

ある学生さんから

「中学校の頃からずっとエシカル消費に関心を持って、買い物の際はできる限りエシカルな選択をするようにしてきたが、お金がたくさんあるわけではないのでいつもエシカルなものを選ぶというわけにはいかない。この点についてどう考えたらいいか」

とコメントを求められました。わかるわかる。痛いほどわかる、その気持ち。

私もいつもオーガニックやフェアトレードといったエシカルな商品を選べているわけではありません。

「あー本当はこっちを選びたい......けれども財政的に厳しい......」と心苦しい思いをすることもしばしば。ではその限界の中で私がどう考えて、どんな選択をして、どう納得しているのか。気になって私なりに考えを整理してみました。

 

1.常にベターチョイスをめざす

そもそもエシカル消費には切り口がたくさんあります。オーガニックであったり、CO2の排出が少なかったり、包装材が少なかったり、生産者を大切にした製造だったり。ですので、たとえオーガニックの、値段の高い野菜が買えなくても、地場産のものを選んだり、フェアトレード認証を得ていなくても、寄付付きのチョコレートを選んだり、中古品を選んだりといった「ベターチョイス」をすることは十分可能です。

「パーフェクトは善の敵である(The Perfect is the Enermy for the Good)」とも言います。お金が十分にないからといって「もうだめだ!」と諦めることはありません。完璧でなくても「包装材の少ないものを選んだからよしとしよう!」「地元の農家さんから購入したからよしとしよう!」。
少しでもよりよい社会づくりにつながる選択をしていれば「よしとする!」。これくらいの心構えで構いませんし、その方が長続きすると思います。

 

2.小さな金額でも大きな力

エシカルな商品をたとえ数百円でも購入すればそれは大きな力です。たとえばコンビニなどではもともと商品点数が少ないので数個売れるか売れないかでも品揃えの判断に影響するという話を聞いたこともあります。

こんな視点もあります。フェアトレード認証製品の日本人一人当たり年間購入額は104円*1。フェアトレードチョコレートを1枚(数百円程度)購入すれば軽く上回る金額です。もし多くの人が一年に1枚でもフェアトレードチョコを購入すれば......この数字は大きく変わるはず。「今年もフェアトレードチョコを1枚購入した(=日本人の平均購入額は超えた!)からよしとする!」。こんな判断も一つではないでしょうか。

ちなみにフェアトレード先進国、スイスの国民一人当たりの年間購入金額は11267円*1。ここまでいくと社会全体の変革が必要ですね。

*1 【国内海外フェアトレード市場動向】国内市場規模131.3億円とコロナ禍にも関わらず伸張

チョコに季節あり。その理由は...

  

3.暮らし方を見直す

消費量が多いと高いものは選びにくくなりますが、消費量を減らせば多少高いものも選べるようになります。そうは言っても消費量はなかなか減らせない、と思っていませんか。案外そうでもないんです。


たとえばペットボトル飲料。手軽で便利な選択ですが、500mlの緑茶を140円で買ったとすると200mlあたり56円(しかもプラスチックごみが発生)。自分で緑茶を選んだ場合、有機JAS認証のついた
540円/50gの緑茶を選んだとしても200mlあたり21.6円(ごみは茶葉だけ)とかなりお得です※2。もしペットボトルと同じ単価でOKとするとかなりいい茶葉を購入でき、ちょっとしたプチ贅沢を楽しめます。

この他にも服や日用雑貨、食材なども考え方、暮らし方によっては楽しく減らせて、環境負荷が減らせるものも結構あります。これもまた、全てにおいて消費量を減らすとなるとしんどいので、「こうやったらどうかな?」と創意工夫を楽しみながら実践することをおすすめします。

※2 参考:「ごみ減らし役立ちハンドブック〜容器包装編〜」 NPO法人環境市民 堀孝弘著

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4.声を上げる

そうは言ってもやっぱりエシカル商品は高くて買えない!という時だってあります。そんな時には「声を上げる」のはどうでしょうか。「声を上げる」といっても、街頭に出てシュプレヒコールを上げるといったたいそうなことではありません。「フェアトレードチョコを置いてもらえませんか」「この製品をつくっている労働者の人権はちゃんと守られているのでしょうか」などリクエストや質問を、スーパーなどの小売、製造メーカーなどに届けるのです。

そんなことして何か変わるのか?と思われるかもしれませんが、企業は私たちが思うよりも案外消費者の声を気にしています。以前、オーガニックの食材を届ける会社で商品企画を担当していた時にはお客様からいただいたメッセージはほとんど全て目を通していました。いただいた声をもとに商品づくりをしたこともあります。

また、なぜ環境保全のための行動を取らないのかといった問いに対し、「消費者からの要求がないから」と答える企業も少なくありません。だからこそ「声を上げる」ことは重要なのです。

以前、スーパーに対してエシカル消費の取り組みについて質問をしたところ、学習会を開催してくれたこともありました(リンク)。エシカルな商品を販売しているスーパーやメーカーに「ぜひ続けて販売してほしい」といった励ましメッセージを送ることもあります。企業の中でがんばっている人を応援するのもいいですね!

 

さて、お財布が厳しい中でのエシカル消費について考えてきましたがいかがでしたでしょうか。今回は限られたお財布の中でエシカル消費を何とか実践し続ける、という視点で考えを整理しましたが、一方で、社会全体としては所得にかかわらず、多くの人がエシカルな消費を選択できるよう政策や社会の仕組みをつくっていく必要があると思います。

長くなりましたが、地球の未来を思い、エシカルな選択を頑張って継続してきた学生さんに敬意を表しつつ、今後の参考になれば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

2022/04/17

引越しもSDGs

引越しもSDGs

新年度に入り、新しい生活をスタートされた方も多いかと思います。

かく言う私も、実は湘南エリアから京都へ引越しをしました。湘南ガールの修行をもっとしようと(心はいつまでもガール 笑)思っていただけに寂しい気持ちもありますが、環境活動の盛んな京都から、またさまざまな発信ができればと思っています。

さて、今回の引越しはアート引越しセンターさんにお願いをしました。営業さんにいただいたパンフレットを見ていると、冒頭でSDGs特集を発見。最近は引越屋さんもSDGsの時代なのか...時代は変わったなあとしみじみ。エコドライブやクリーンディーゼルトラックを推進していること、トラックにAEDの搭載をしていることなどさまざまな取り組みが紹介されていました。

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AED搭載車はトラックに表示がある(出典:アート引越しセンター)

とはいえ、引越しはあくまで引越し。「SDGsも大切だけれども、実際の作業の効率や質が大事」なんて私にしては珍しく「実質」を重視していたのですが、SDGsの点からみても引越しの質としても「これはいい!」と実感したことが二つありました。

一つはタブレットを利用した営業によるペーパーレス化。 営業担当の方は若い方でしたが、タブレットを利用しながらとても手際よくサービスを説明。これが本当に感心するほど段取りよく、若い方でもここまでできるようにしているアートはさんはすごい!と思いました(もちろん、営業さんの腕前もありますが)。バックオフィスと確認をとりながら、その場で見積書も作成。従来であれば、「社に一度戻ってから改めてお返事します...」となりがちなところでしょう。現場で完結できればユーザーにとっても待たされることなく即決できますし営業の方にとっても楽なはず。「働き方改革」の一環としてもタブレット利用を推進している、と言う説明が実感できる出来事でした。

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もう一つ、感動したのは「エコ楽ボックス」。
引越し作業の大変さの一つに(引越しはこれが5回目!)梱包があります。中でも食器は割れ物だけに気をつかいます。今回貸していただいた「エコ楽ボックス」は発泡緩衝シートで枠がつくられており、その間にポイポイとお皿を入れるだけ。 新聞やプチプチに包む手間は一切なし。とても楽でした。そして割れる心配もなし。これまでは開封後の山のような緩衝材のごみが発生し、一時的なものとはいえ、胸が痛みましたが今回はその心配もなし!ごみを片付ける手間もなく、こんなに気持ちのいいことはありません。

エコ楽ボックスはリユース品なので、開封後はアートさんが持って帰ってくださり、また、どこかで使われることになります。2008年から提供されているサービスとのことですが、これまでに削減されたごみはかなりの量になるのではないでしょうか。

引っ越す人も楽で資源の節約にもなる。一石二鳥な素晴らしい取り組みだと思いました。

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(写真:実際にお皿を入れた時の様子(上)。ケースも緩衝材も折り畳むことができるようになっており、スペースを取らない(下))


SDGsの達成年度まであと8年。自社の取り組みを分析し、マテリアリティを見据えながら、具体的な取り組みにまで落とすことが重要です。今回はSDGsが現場まで浸透していることを感じられる、嬉しい経験でした。


SDGsに照らし合わせて自社の取り組みを分析できていない、取り組みまで落とせていない、取り組みを上手く、ステークホルダーに伝えられていないといった組織の方も多いのではないでしょうか。SWAVEでは169のターゲットレベルで分析を行い、取り組みの戦略と立てた上で広報プランを作成するサービスも提供しています。関心のある方はぜひお問合せください。

 

参考:アート引越しセンター SDGsの取り組み

 

2022/04/07

今回はスーパー『企業のエシカル通信簿』第5回結果発表!

『企業のエシカル通信簿』第5回結果発表!

エシカルな選択をしたい、と思ってもどの企業、どの商品がよりエシカルなのかなかなか分からない、という方も多いのではないでしょうか。

そこで、市民自ら調べてみよう!と2016年から企業調査を行っているのが『企業のエシカル通信簿』です。人権や環境、アニマルウェルフェアなど多様な分野を専門とする38のNPO/NGOが主体となって行っており、私も環境分野の一部をお手伝いをさせていただいています。

今回は多くの人が日々利用するスーパーを対象に、シェア上位6社を調査しました。【詳しくはこちら

<対象スーパー>

  • 株式会社アークス
  • イオン株式会社
  • 株式会社イズミ
  • 株式会社セブン&アイホールディングス
  • 株式会社バローホールディングス
  • 株式会社ライフコーポレーション

 

詳しくは調査結果(こちら)をぜひご覧いただきたいのですが感想を一言。

毎回感じるのですが、調べて初めて分かることがあります。

例えば今回、「水」分野の調査を行ったのですが、残念ながら問題の分析や解決のための取り組みなど、主だった動きは見られませんでした。水分野は比較的長らく取り組まれてきた課題ではないか、と思っていたので意外でした。水はTNFD(自然関連財務タスクフォース)の対象にもなっており、欧米企業がこぞって着手している分野でもあります。水に恵まれていると思われがちな日本の感覚が影響をしているのかもしれませんが、水リスクは年々高まっており、危機感を持って取り組んでいただければ、と思いました。

 

もちろん、嬉しい発見もあります。もう一つ担当した調査分野「気候変動」分野では、昨今の流れもあり、気候変動緩和のために2050年までにネットゼロを目指すスーパーは6社中4社ありました。当然といえば当然ですが、これまでには見られなかった動きではないかと思います。2030 年の段階で40%以上(バロー)、50%以上の削減をはかるスーパー(セブン&アイ)もありました。

 

「エシカル通信簿」は、単に企業を評価するだけではなく、通信簿を市民からの「ラブレター」として企業に市民が何を求めているのかを伝え、企業とのコミュニケーションをはかっていこうとしています。企業との対話を通じて、持続可能な社会を構築していくための行動を加速していければ、と改めて思いました。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2022/03/29

きっかけは割れ目

話のきっかけをつくる

チョコレート好きな私にとって、疲れた時に口にするチョコレートは格別です。今回は私の大好きなチョコレートから広報TIPをご紹介します。

今回ご紹介するチョコレートはオランダで大人気のチョコレートブランド、「トニーズ・チョコロンリー」です。

「あれ、でもなんだかいびつな割れ目。これじゃあ、均等に分けて食べられないじゃない!」と思ったあなた。
まさに、そこにトニーズが伝えたいことがありました。

世界のカカオ生産の約6割を占める西アフリカでは約156万人もの子どもたちが働いています。その結果、教育を受けられず、貧困の連鎖が生まれ続けているのです。しかし、一方で先進国の一部のチョコレートメーカーは低価格でチョコレートの原料となるカカオを買い続け、大きな利益を得ている。その先には安価な価格でチョコレートを楽しむ消費者が...... 

これこそ「いびつ」な世界じゃないのか! トニーズチョコからはそんな声が聞こえてきそうです。

 

 
トニーズチョコは、西アフリカの児童労働に問題意識を持ったオランダのジャーナリスト、ジャーナリスト トゥーン・ファン・デコーケンさんにより2005年に設立されました。チョコレート業界にはびこる奴隷制を終わらせることをミッションに、自らが使う素材はもちろん、カカオ、砂糖共にフェアトレード認証をを得たものを使用しています。

サステナビリティに関する話題は背景が複雑なことが多く、なかなか簡単に理解できることばかりではありません。それだけに、ついつい説明が億劫になったりしてしまうことも多いのではないでしょうか。しかし、消費者やステークホルダーとサステナビリティについてまずは話すこと、これは全ての始まりであり、とても大切です。

そこでおすすめしたいのが今回ご紹介したようなわかりやすい「コミュニケーションポイントをつくること」。人がふと気づくようなフックを意図的につくることによって、話を切り出しやすくしたり、見た方が気づきやすくすることが目的です。

もう一つ、コミュニケーションポイントの事例をご紹介します。

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以前にご紹介した木造賃貸マンション(こちら)の玄関に設置された木製の棚。地元産木材で作られており、住んでいる方が地元産木材を意識したり、また、遊びに来られた方に「うちのマンションは地元産木材でつくられているんだよ」と話すきっかけにしてもらうために設置されていました。

確かに、部屋はごく一般的なワンルームマンションなのでこれがなければ、地元産木材で作られたマンションであることは忘れられてしまいそうですし、何もない中で、部屋に来た方に「このマンションはね...」と話すのもなかなか難しそうです。その意味ではとてもいい「コミュニケーションポイント」だと思いました。

 


児童労働も気候変動も生物多様性も、全ての社会問題はまず「知ること」から始まります。その「知る」きっかけとして、コミュニケーションポイントはとても重要です。コミュニケーションポイントを通してどんな情報を届けるか、どんな会話が生まれるか、考えてみるとワクワクしますね!

 

トニーズ・チョコロンリーについて詳しくはトニーズ・チョコ・ロンリー

おまけ、もう一つコミュニケーションポイントの事例をどうぞ(ステッカー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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