コラム
2021/05/20
今こそSDGs 達成のカギは

SDGs、SDGs、SDGs。毎日のように新聞の紙面で登場する言葉。それは、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略です。今、なぜ、SDGsなのでしょうか。
この「持続可能な開発」の考え方は、1987年、日本政府の支援のもと設置されたブルトラント委員会(※1)が採択した『我ら共通の未来』と題した報告書で提起されたものに由来しています。「将来世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、現代世代のニーズを満たす」発展のあり方を提起しました。環境の保全と経済・社会の好循環を謳っています。SDGsは、その流れを継承しているもので、もうすでに35年の経緯を経て、今日に至っています。つまり、SDGsは、これまでの国際社会の経験や教訓が凝縮された叡智の結晶であると見なすことができます。
その叡智の結晶は、人権や労働の問題が社会の歪みを深め、平和な社会の実現の妨げとなっていること、そして、地球環境が悪化がビジネスそのものを脅かすレベルに到達していることを認めるもので、今日のビジネスのあり方を真剣に問うものとなっています。
SDGsは、国連の場で国際社会が形成した、2030年の未来のより良い社会の実現のための17のグローバルな目標です。国、自治体、企業、アカデミア、NGO、個々人等が、その達成のために取り組むべき目標であるとされています。2015年にスタートしたSDGs実現の取り組みは、2021年を迎えた現在、「実行の段階」を迎えたと言われています。従って、企業は、今まさに、サステナブルなビジネスを実践し、社会に対して発信していくことで、SDGs達成の極めて重要なプレーヤーとなっていると考えられています。
今日、企業は、社会の道具ではなく、サステナブルな社会の実現の主人公とみなされてきています。そのことは、国や自治体などの重要性を損なうものではありませんが、グローバルな潮流は、企業がビジネスの実践を通じて、社会問題を解決しながら収益を上げ、SDGsを達成していくことを期待するものなってきています。
昨今の、いわゆるESG投資やSDG投資は、そのような企業を評価し、投資する、というものです。また、エシカル消費といわれる消費行動も、消費者が、商品やそれを設計し、生産し、販売する企業の倫理的側面を評価した上で、購入し、消費するというものです。今日の、責任ある投資家や意識の高い消費者は、自らの投資のインパクトや消費のインパクトがどのようなものであるのか、により関心を抱いてきています。このような潮流と共に、企業がSDGsに取り組むことによって、企業価値や収益の向上にもつながってきています。
また、すでに、サステナブルな取り組みを行なっていながらも、うまく社会に伝えきれていない場合にも、SDGsの活用は、現状の改善を促してくれます。SDGsの取り組みによって、企業は、投資家、消費者とさらに良い関係を構築することにつながるものと考えられます。
SDGsの波は、もう既に我々の社会やビジネスに、そして、市民的生活に届いています。10年後の目標達成に向けて、さまざまなプレーヤーが動き出しています。つまり今こそ、SDGsを活用したビジネスを考える好機とも言えます。SDGs活用によって、現在の企業価値やビジネスの価値を再発見し、より洗練されたものへと変革していくと同時に、持続可能な社会を実現する、企業はその重要な役割を担っているのです。
(文責 SWAVE シニアアドバイザー 川本充)
SDGsに取り組んでみたい方へ>SDGsビギナーのためのスタートアッププログラム(6月までスタート価格にて受付中/最大2件)
※1 ブルトラント委員会:国連によって設置された「環境と開発に関する世界員会(World Commission on Environment and Development/WCED)」が正式名称。ノルウェー首相を経験したグロ・ハーレム・ブルントラント女史が委員長となり、世界的有識者21名によって構成されました。成果は、1987年の「我ら共通の未来(Our Common Future)」と題する報告書にまとめられ、その中で、「持続可能な開発(Sustainable Development)」が提唱され、定義されました。「持続可能な開発」の考え方は、その後、大きな影響を持つ考え方となりました。国連が生み出した重要な成果の一つです。
2021/05/15
エシカル消費 大学生の反応は

5月上旬、神戸大学の神戸GCP基礎論で「エシカル消費と私たちの暮らし」をテーマにお話をさせていただきました。オンラインでの開催ではありましたが、熱心に質問をしてくれる学生さんが多く、お伝えする方としても多くの刺激をいただきました。
終了後のアンケートをみると様々な気づきを得てくれたことが伝わってきました。たとえば、
自分に見えていないだけで現代にも奴隷のように搾取されている人がいることを初めて知った。
日本の養鶏場の90%がバタリーケージで私のイメージしていたフリーゲージの養鶏は少数という事実を知れて良かった。
衣服の化学繊維も海洋プラスチック問題にかかわっていることを知った。
人新世という言葉を意味することについては、
人間が地質学に歴史を残してしまうほど、環境汚染が進んでしまっていること
に改めて深刻さを感じている学生さんもいました。
多くの疑問も寄せられました。
量り売りや紙製品の導入等のある種小手先の対応で、プラスチック消費は減らせるのか。
給食にオーガニックのお米を用いる活動は全国の学校ですることが可能なのか。
など個別の内容に関するものもあれば、
日本におけるMSC認証の認知度が海外に比べて低いのはなぜか。
日本において、養鶏でバタリーケージが多いのはなぜなのか。
日本が先進国の中で対策に遅れるのはなぜか。
など日本の取り組みの遅れに疑問を投げかけるもの、さらには
なぜ愛知目標が達成されなかったのか。
SDGsは何をもって達成されたとするのか。
エシカルな消費活動を進めることと貧困層が生活していける社会をつくることの間のトレードオフをどう解決していくか。
など問題の根本に迫る問いもありました。
全体的には多くの学生さんが「消費者が社会問題の解決に深くかかわっている」ということと同時に「消費者の買い物の仕方によってエシカルな好循環をつくり出せる」ということに気づいてくれたことが、話し手としては何よりの喜びでした。また、今後実践してみようと思ったこととしては、マイボトルの持参や認証ラベルついた商品を選ぶ、量り売りのもの、包装材が少ないものを選ぶなど多くの具体例が寄せられたことも嬉しく思いました。
数年もすれば社会人になる大学生のみなさんにエシカルの視点を知ってもらえたことは、これからサステナブルな社会をつくっていく上とても貴重です。いつかどこかで、ご一緒できることを楽しみにしています!
機会をいただきました、消費から持続可能な社会をつくる市民ネットワーク、神戸大学の皆様にこの場を借りてお礼を申し上げます。
2021/05/02
SDGsビギナーのためのスタートアッププログラム

持続可能な開発目標、SDGs(Sustainable Development Goals)の達成年度2030年まであと10年を切りました。すでに、実現に向けて行動する「行動の10年」に入っています。
しかし、「SDGsに取り組みたいと思いつつも、着手できていない」「どこから手をつけたらいいのか分からない」という方もまだまだ多いのではないでしょうか?
そこで、SDGsビギナーの方のためのプログラムをつくりました。
このプログラムを通じて、ひとりでも、一組織でも多くの皆様がアクションを起こす機会になればこんなに嬉しいことはありません。
将来世代のために、最初の一歩を一緒に踏み出してみませんか?
(こんな方におすすめ)
・SDGsに取り組んでみたいけれどもどう取り組んだらいいのかわからない
・自社の取り組みがSDGsにどう関連するのかわからない
(得られるもの)
・SDGsとは何かが分かる
・SDGsと自社の事業の関連性を整理でき、行動を起こしていくための基礎固めができる
<プログラム内容> 以下の内容を一組織ごとに行います。クローズドですのでご安心ください。
セッション1 自社の事業を説明してみよう
御社の事業をご説明していだきます。特にSDGsに関連した内容がなくても全くかまいません。
セッション2 SDGsを知る
SDGsとは何か、まずは基本を押さえましょう。実際にどんな取り組みがあるのか事例も交えながらお伝えします。1on1なので「今さら聞けない質問」も安心してできます。分からないことはここですっきりしましょう。
セッション3,4 SDGsと事業の関連性を整理する(全2回)
セッション1,2をもとに、事業とSDGsの関連性を整理していきます。
本プログラムはここまでとなりますが、SDGsの取り組みの醍醐味はこの後。事業を通じていかにSDGsの実現をはかるか、という点にあります。さらに次のステージに踏み込んでチャレンジしたい方はプログラム終了後にご相談ください。
こじんまりしたセッションで安心感を大切にしながら、SDGsの実践に向けたしっかりとした土台を一緒につくります。2030年に向けて、SDGsを活用しながら事業の発展を見出していきましょう。
<スタッフ紹介>
・SWAVE サステナブルコミュニケーションプランナー 有川真理子
持続可能な消費に関する企業・自治体との協働事業コーディネートを多数経験。また環境NGO、オーガニック食品会社などでの20年以上にわたる広報経験を活かし、サステナビリティを高めるための広報支援を行っている。詳細はこちら
・SWAVE シニアアドバイザー 川本充
オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学大学院国際関係学修士、京都大学大学院博士課程単位取得退学。専門は、国際関係学及び地球環境学。20年以上にわたり地球環境ガバナンスやSDGs・ESG等についての研究・教育に従事。最近では、「SDGsとビジネス」に関する研究の一環として、良品計画との共同研究プロジェクト(2018年度-2019年度)等に取り組む。
message:いっしょに、SDGs達成に向けて取り組みましょう!
【費用】 100,000円(税別)
【申込み方法】
申し込みフォーム(こちら)より必要事項をご記入の上、お申し込みください。事前に質問がある方はお気軽にお問い合わせください(メールはこちら)。
(備考)
・1セッションは最大90分。基本、オンラインでのセッションとなりますので全国どこからでもご依頼可能です。(オフラインでの開催も可能ですが、その場合の会場費、スタッフの交通費実費、出張手数料(1回3,000円)をご負担ください。また、基本的に1時間程度でおうかがいできる場所(藤沢市内発着)とさせていただきます)
・実施期間は全体を通して基本3ヶ月程度を目安としてください。
・同業者の方のお申し込みはご遠慮ください。
2021/04/22
残念なプレスリリース タイトル

仕事柄、サステナビリティ、特に環境面での取り組みをPRするプレスリリースをみる機会が多くあります。
しかし、中には、プレスリリースの第一関門となるタイトルの時点ですでに魅力がうまくPRできていないものも少なくありません。
取り組みはいいのに、世の中にもっと広めよう!というところでどん詰まってしまっている。もったいなくてしょうがありません。
「本文で説明すればいいのでは」と思われるかもしれませんが、タイトルで面白くなければ忙しいメディア関係者には見てもらえません。せっかくいい取り組みをしているのにタイトルで捨てられてしまうのはもったいない!の一言。
そこで今回は自戒も込めてサステナビリティを伝える際のプレスリリースのタイトルについて考えてみたいと思います。
メディアが報道したくなるポイントを考える際に役立つのが「PR IMPACT®️」(参考参照)。これは電通さんが作成したオリジナルメソッドで、メディアが報道したくなる6つの視点がまとめられています。
その一つが「社会性」、つまり、伝えたい事柄が社会にどう役立つのか、です。
サステナビリティに関連する事柄の場合、もともとこの社会性はクリアしているので無理やりつくる必要はないというのが一つの利点になるのですが、そこに甘んじているのか、タイトルの時点ですでに力が抜けてしまっているようなタイトルもあります。
たとえば、
「ABCシステムを開発」
「A地域でABC認証を取得」
このタイトル、みなさんはどう思われますか? 取材したい!と思うでしょうか。これだけでは何のことかわからない、という人が多いのではないでしょうか。
しかし、実際、ほぼこれに近いプレスリリースタイトルを何度かみかけたことがあります。
これではせっかく社会性というウリポイントがあってもみてもらえません。
発信している人からすると、ABCシステムはごみ削減に役立つシステム、ABC認証は森林保全に役立つ認証といった認識が当たり前になっているのかもしれませんが、はじめてみる人にとってその価値は全くわからないと考えるべきでしょう。
せっかくの社会性を活かすのであれば
「SDGs目標12 食品ロス半減貢献 飲食店向けABCシステムを開発」
「四国地域初 A(地名)で 森林保全に貢献するABC認証を取得」
など、具体的な訴求ポイント、最近のキーワードなどをタイトルにしっかりと入れ込むことが大事です。
当然、このタイトルに続く文章では、このタイトルを補完すべく、どうSDGs目標12の簡単な説明や食品ロス問題の現状、いかにこのシステムが食品廃棄物削減につながるのか、具体的なデータ、写真などを伝えていく必要があります。
最近は有料プレスリリース配信システムを通じて、メールのような形でプレスリリースを受け取る機会も増えています。メールの場合、タイトルは前から18文字程度が開封されるかどうかの決め手と言われています。つまり、タイトルを工夫するだけではなく、さらに前半18文字でビビッとくるようにしなくてはいけないのです。
サステナビリティの取り組みの推進は言うまでもなく待ったなしです。
サステナビリティに関連する取り組みがもっと報道されるように、ぜひタイトルから温度あげて仕込んでいきましょうね!
<参考> PR IMPACT®️
Inverse 逆説、対立構造
Most 最上級、初、独自
Public 社会性、地域性
Actor/Actress 役者、人情
Keyword キーワード、数字
Trend 時流、世相、季節性
詳しく知りたい方は『PR思考』翔泳社がおすすめ。
注意)正しい英語のスペルはIMPACT。ここではCがKになっているのでご注意を。
2021/03/15
3/15 世界消費者権利の日に眺めたい8つの権利と4つの責務

今日、3月15日は世界消費者権利の日です。
1962年にケネディ大統領が、後の消費者行政の基本理念となる消費者の4つの権利を「消費者の権利・消費者の利益保護に関する特別教書」の中で発表したのがこの日でした。
その四つの権利とは以下のものです。
1 安全を求める権利
2 知らされる権利
3 選ぶ権利
4 意見を聞いてもらう権利
さて、これらの内容についてどんなことを感じますか? そもそも「こんな権利があったなんて知らなかった」という方もおられるかもしれません。
エシカル消費を例に考えてみましょう。
選ぼうとしている商品がエシカルなのかどうか、「知らされる権利」は確保されているでしょうか。エシカルな商品を「選ぶ権利」についてはどうでしょうか。また、エシカルな取り組みをもっとやってほしい、エシカルな商品をもっと取り入れてほしい、といった「意見を聞いてもらう権利」についてはどうでしょう。
考えてみると、消費者の立場、そして売る側、企業としての立場、NGOの立場、などから思い浮かぶことがあるのではないでしょうか。
消費者の権利はその後、世界消費者機構(CI)によって四つの権利が追加され、現在では以下八つの権利が世界共通の消費者権利となっており、日本の消費者基本法にも定められています。
- 健全な生活環境が確保される権利
- 安全が確保される権利
- 選択の機会が確保される権利
- 必要な情報が提供される権利
- 消費者教育の機会が提供される権利
- 消費者の意見が消費者政策に反映される権利
- 被害者が適切かつ迅速に救済される権利
消費者の立場からこれらを眺めると「まだまだ私たちの権利は確保されていない!」と不満を覚える方もおられるかもしれません。しかし、私たち消費者はこれらの権利が保障されるのを受け身で待っている存在ではありません。
世界消費者機構(CI)では消費者の責務として以下四つの責務を提唱しています。
- 批判的自覚:購入する物質やサービスの価格と品位について、批判的自覚をもつ責任。
- 行動すること:正しいと信じることを主張し、公正な取り扱いが得られるように行動する責任。
- 社会的関心:自分の消費が他の人々、特に不利な立場の人々や力のない人々に与える影響について、自覚する責任。
- 環境への自覚:自分の消費がどのような影響を環境に与えるかを理解する責任。
- 連帯:消費者の利益を増進させ、守るために、力を強め、影響力をおよぼすことのできる消費者として連帯する責任。
これら四つの責務をみていると、急に正座をしたくなる気分になるのは私だけでしょうか。
決して消費者の権利だけを振りかざすだけではなく、問題の解決に向けて、自ら主体者となってかかわっていくことの大切さが浮かび上がってきますね。
エシカル消費についてこれらの権利、責務について考えると、個人として、組織としてすべきこと、企業にとっては事業の可能性も見えてくるのではないでしょうか。また、これらの課題は決して一人、一組織だけでなし得るものではなく、パートナーシップによってコレクティブインパクトを重視していくことの大切さも感じます。
世界消費者権利の日の今日、改めて八つの権利、四つの責務をセットで眺め、これからのアクションについて考えていきたいものですね。